肥満・脂質異常症と密接な関係がある枕元の灯り

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照明

「夜寝るときには、電気を全て消しますか?」それとも「スタンドの豆電球をつけて休みますか?」長寿になってくるとこんな些細な習慣も長~い間に「塵も積もれば山」となって健康を左右するようです。

家庭用の豆電球程度でも大きなリスク

奈良県立医科大学(地域健康医学講座)の大林賢史特任助教と佐伯圭吾学内講師のグループは、528人の高齢者を2グループ(夜間、自宅寝室で平均3ルクス以上の照明にさらされるグループと未満のグループ)に分け、コホート研究(※)により肥満や脂質異常症(高中性脂血症・高LDL血症・低HDL血症)との関係を明らかにしました。

結果は、夜勤労働者がさらされている照明よりも遥かに低い家庭用の豆電球程度と考えられる明るさでも病気にかかる確率は1.9倍になりました。
(奈良県立医科大学 9 January 2013)

夜勤労働者は、肥満・脂質異常症、心血管疾患のリスクが高いことは発表されており、原因の一つとして夜間光にさらされることで、サーカディアンリズム(生体の概日リズム)が変調をきたすと考えられています。

大林賢史特任助教は、
「本研究は、初期対象者528名の横断解析の結果であり、これまで健康影響が考えらていたよりも非常に低い自宅寝室の夜間光暴露でも肥満や脂質異常が惹起される可能性を示唆しています。
本研究以外にも私たちは、日中光暴露が多いほど夜間メラニン分泌量が多いことを明らかにしています。

メラニンは脳の松果体から夜間に分泌されるホルモンで、その作用は生体リズムの調整のほか、不眠症、うつ病、認知症、がん、高血圧などを予防する効果などが報告されており、日中光暴露が健康へ良い影響を与えている可能性を示すものです。

現代人は日中に屋内活動が多いため日中光暴露が少なく、夜間は人口照明を使用するため夜間光暴露が多くなる傾向があります。この現代人の光の浴び方が生体リズムの変調や夜間メラトニン分泌の減少を起こし、現代社会で増加している不眠症、うつ病、認知症などの原因になっている可能性が考えられます」
「実生活における光暴露の健康影響を解明するためにさらなる研究を進めていきたい」と述べています。
(奈良県立医科大学 9 January 2013)

サーカディアンリズムの乱れが肥満や脂質異常症の危険因子に

奈良県立医科大学(地域健康医学講座)の車谷典男教授は
「肥満や脂質異常症の危険因子として食事と運動がよく知られていますが、本研究は夜間のごく低照度の夜ばく露によるサーカディアンリズムの乱れを新しい危険因子として示唆したところに新規性がある。さらに制度の高い疫学研究で確認したい」とコメントを寄せています。

以前は、月明かりでも良いので、何か灯りがないと安心して寝られませんでしたが、気がつくと電気を消して寝られるようになっていました。高脂血症気味なのは過去の遺産を引き継いでいるのかと、ふと思ったりします。赤ちゃんがいらっしゃるママは、きっと小さな灯りがあった方が便利ですよね。

(※)研究対象となる疾病の発生率を特定の要因において曝露した集団と曝露していない集団に分け一定期間追跡し、比較する観察的研究。

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