「ZEN」のイメージからくる”精神安定の香り”
フランス人と香りは、切っても切れない間柄。自分を魅力的に演出する”香水”を選ぶように、生活の場を快適にする”空間の香り”にもこだわっている。インテリアの仕上げとして、部屋の香りは重要なポイントなのだ。ポプリ、エッセンシャルオイル、スプレー、キャンドル、お香など、環境の香り商品も充実。
ゲラン、イヴ・サンローラン、ニナ・リッチといった日本でもお馴染みの香水ブランドから、自然派志向の化粧品ショップ、スーパーマーケットにいたるまで、個性的な香りを発売している。
デザインも洒落ているので、インテリア小物としてさりげなく加えることができる。
一般的な若いパリジェンヌのアパルトマンは、決して広いとはいえない。そして、冬は暗く長い。優しい花の香りのキャンドルに火をつけたり、新鮮な森林の香りのポプリをバスルームに置いたり・・・。
部屋の中に漂う自然の香りが、空想の旅を演出してくれるのだ。
デコレーションの一部としてだけではなく、健康のためにも、部屋の香りは大切とされている。この香りの効果を利用した治療法のひとつが、アロマテラピーだ。
バラは心を穏やかにし、ラベンダーは眠りを誘い、ジャスミンには目覚まし効果がある。ペパーミントは気分を爽やかにし、森林の香りはストレスを解消、レモンは心の落ち込みを回復させる。
大都会パリに暮らすパリジェンヌは、ストレスも多い。プライベートタイムに素敵な香りを漂わせ、心身の疲れを癒すことを心がけている。
日本のお香を、パリの自然商品ショップで見つけたのは、もう1年以上前のこと。フランス人にとって、お線香の香りは、「ZEN」のイメージからくる”精神安定の香り”のようだ。
最近パリで注目を浴びている「ZEN」は、日本の禅と必ずしも一致しない。思想だけでなく、ヨガや太極拳といったエクササイズ、健康的な日本食など東洋的なものを全部ひっくるめてこう呼び、衣食住のあらゆる分野で話題で話題となっている。
「禅」の精神がストレスを解消し心身をリラックスさせると考えるフランス人。現代社会のキーワードとして、欠かせないものらしい。もちろん、日本人にとっても、お線香は心を落ちつかせる香りといえる。
し~んと静まった畳の部屋をイメージさせるお線香の香りが、パリでも受けているのだから面白い。
香水(Parfum)の語源は、ラテン語の「煙を通して」に由来する。神聖な儀式にお香を焚いたことから、香りの歴史は始まった。
パリでは、古典的なアラビアやインドのエキゾチックな香りも人気だ。お線香を焚いた部屋で紫の煙と魅力的な香りに包まれ、ほんの一瞬、現実社会から逃避する。
パリジェンヌが生き生きと美しく活動するのは、この香りの効果からかもしれない。