市内を端から端まで突っ切って走るレース
トルティエ(メキシコ料理に出てくるパンケーキのような食べ物)があちこちで宙に飛び交う。スタート地点に向かう大勢の参加者から、お祭り騒ぎの歓声が上がる。毎年5月第三日曜日に市内で行われる7.5マイル(12Km)を走るレース。朝8時にスタートが切って落とされる。今年は、5月19日に開催。降り続く小雨にもかかわらず、約75,000人のランナーとそれを応援する大勢の観衆とで市内が湧いた。
このレースは1906年にあったサンフランシスコ地震の6年後に、長い間の暗い押し潰された心を励ます企画として始められたとか。スタートラインは、ダウンタウンのサンフランシスコ湾近く、Spear Streetが交差する地点のHoward Street。ゴールはゴールデンゲートパークを通り抜けて太平洋が見えるGreat Highwayの一角。まさに、市内を端から端まで突っ切って走るレースと言う意味で、ベイ・トゥ・ブレーカーズ(Bay to Breakers)と名付けられている。スタートラインに並ぶのは、例年ケニア人の面々で、約33-35分で走り終えてしまうシリアス組。
ちなみに、今年の優勝者もケニア人だった。その後ろに延々と並ぶのが、参加することに意義ありといったランナー。ベビーカーに乗せられた赤ちゃんから、90歳代の老人、様々に仮装をした人たちなど。犬だっている。参加者は多種雑多。徒歩で歩きぬける人たちも多い。
仮装したランナーが、初めてレースに参加したのは1940年のこと。今では、この仮装者を見ているだけでも楽しいというぐらい、志向を凝らした仮装者がレースを飾る。毎年、社会情勢をもじったり、ニュースのトップを飾った人物や事柄に仮装する人たちが沢山いる中で、今年は、エンロン社の会計機密資料などを細かく切り刻む寸断機に仮装した男性が、ベスト仮装者として選ばれた。
裸で走らないでくださいという警告にもかかわらず、毎年、何人の裸走者がいることか。今年-50人、いや、もっと見たような…。毎年のように見かけるが、20人がひとつの大きな鮭の形のぬいぐるみをかぶって、産卵時の川の逆昇りを真似して、レース参加者の走る方向に逆らって走り抜ける鮭グループ。ケーブルカー、ゴールデンゲート・ブリッジ。シュレック、オースティンパワー、エンジェル、ウエディングドレスを着た花嫁。レース参加者も観客も一体になって楽しめる。
ゼッケンをつけている走者は正規登録をしている人たち。この人たちにはレース終了地点でレース記録がつけられていき、その結果をレースの数週間後に自宅で受け取る。毎年、その記録(順位とレース記録)を集めて比較をするのも楽しい。
もちろん、登録をせずに参加する人たちも多い。何といっても、走り終わった時のヤッターという気持ちは、何にも代えがたいもの。レース後に気づく筋肉痛も何のその。毎年参加せずにはいられない。これはサンフランシスコのBIGなイベントなのだ。