「フィルモア・ストリートの上り坂はもう御免だ」
9月14日日曜日。歩道から、屋上から、ビルの窓から、観客がGo Go Goの掛け声とともに牛の首にかけるベルを鳴らしてレーサーに激励を飛ばす。
市長ウイリー・ブラウンやパシフィック・ハイツ在住の有名俳優・コメディアン、ロビン・ウイリアムズの顔もある。60万人の声援と拍手で、サンフランシスコが沸いた。ツール・ド・フランスで五連覇を果たしたランス・アームストロングを始め、200人を超える世界トップサイクリストが集まって、この日、国際自転車レースが行われた。
男性のレースは今年で三回目を迎え、午前十一時スタート、108マイル(172.8Km)のレース。女性のレースは、今年が始めてで早朝七時半スタート49.6マイル(79.4Km)のレース。レースは、ダウンタウンEmbarcadero通りのフェリービルディングの前から始まって、フィッシャーマンズ・ワーフ、ノース・ビーチの平坦部を抜けて、湾に沿ってマリーナを西に向かい、そのあとパシフィック・ハイツとラッシャン・ヒルの坂道へと登る。
スタート地点と同じフェリービルディングの前。三つのサイクルに分けられたこのコースを、男女で異なる回数繰り返して回る。
レースの見所は、レース中、パシフィック・ハイツにあるフィルモア・ストリート、急勾配の魔の上り坂。この上り坂はあまりにも傾斜が激しいために、横には歩道の替わりに階段がついている。
車で登っても、途中でストップすると、下手をすると坂の下までバックしなければスタートができないほど。そこを自転車で登ろうというわけだから、苦しい難関と言える。男性はその悪名高い上り坂を含むサイクルを合計八回回らなければならない。女性は四回。
第一回国際自転車レースの優勝者、ジョージ・ヒンカピーがレース後、フィルモア・ストリートの上り坂はもう御免だと言ったコメントが忘れられない。
プロの自転車レーサーにとってもそれほどタフな上り坂というわけだ。今年も脱落者が相次いだ。四時間半の間、猛スピードでペダルを踏み続けるレーサー。パンクや転倒など自転車トラブルのサポートを行うサービス車が、平坦部ではアクセルを踏み込んでレーサーを追って走るほど。
フィルモア・ストリートの坂でエネルギーを使い果たしてしまうと、平坦部でスピードが出なくなる。平坦部での加速、魔の坂道での耐久性、それを繰り返す正にすさまじいレースだ。
今年、男性の優勝者はアメリカ、オレゴン州からやってきたクリス・ホーナー。女性の優勝者は英国からやってきたニコール・クック。
応援者の熱気とサンフランシスコの美しさを絶賛した勝者たち。坂の街サンフランシスコ、世界のどこにもない味の自転車レースが世界中のトップサイクリストを魅了する。来年もまた世界中から多くのサイクリストが集まることだろう。