来年が良い年でありますように
今年もユニオン・スクエアの近くにあるギアリー・シアターで、"クリスマス・キャロル"の上演が始まった。"くるみ割り人形"と同様に、この時期になると必ず劇場で上演される、チャールズ・ディケンズの書いたクリスマスを題材にした有名なストーリーだ。
周囲の人たちとの付き合いを一切しない、お金を儲けて貯めること以外に全く興味がない、慈悲もなにもないスクルージの前に、クリスマスの前夜、過去、現在、そして未来の三人の精霊が現われ、スクルージの周りで起こったこと、起こっていること、起こるだろうことを見せつけ、そんな態度で暮していればどんな将来が待ち受けているかを知らせる。
その恐ろしい未来に驚愕したスクルージは、お金が有っても無くても、心が豊かであれば、人から慕われ、楽しく幸せに暮していくことができると悟り、改心することを精霊に強く誓う。そして、早速クリスマスの日から態度を一転し、困っている人たちに手を差し伸べ、周囲の人たちを敬って生きていくという、教訓的なストーリーだ。
このストーリーの示すところ、周囲の人たちと助け合って生きていくことの大切さやそのもたらす効果は、限り無く大きなものであることを、誰もが知っているからこそ、19世紀に英国人作家チャールズ・ディケンズが書いたこのストーリーが、国境を越え、宗教の壁を越え、時代を超え、いまだに賞賛され語り続けられているのかもしれない。
今年、日本では自然災害が数多く発生し、各地で本当にたくさんの方たちが悲惨な経験をされたようだ。いまだにその影響で、不便で苦しい生活を強いられている方たちも多いと聞く。
そんなとき、多くの人たちがボランティアとして、そんな方たちを励まし助け合う活動に参加され、また、当地に出向けない人たちは義援金や寄進物という形で現地の方たちを支援されている。困っている人たちのために、今たまたま困っていない自分たちができることは無いか、何かの助けになりたい。すべてそんな気持ちから生まれた行動だろう。
例年なら家族で楽しく過ごしているはずのこの時期に、置かれた状況にあって今年はそれができない方たちも、そんな周囲の人たちからの厚意に、心温まる思いを抱かれているに違いない。
毎年この時期になると必ずこの一年間を振り返り、どんな年だったかと考えてしまうが、今年は、まさに周囲の人たちと助け合って生きていくことの大切さを噛みしめる年だった。新しい年がやってくる。
一日も早く、被災地の復興が進み、元通りの生活が戻ってくるのを祈って止まない。そして、生まれ変わったスクルージや支援活動の参加者に見習い、心が豊かであれば、人から慕われ、楽しく幸せに暮していくことができる -そう念じて実行する年を迎えたい。