約3000億円のプロジェクト
五月初め、幹細胞研究のための州のヘッドクオーターとして、サンフランシスコが選ばれた。州内で候補地となっていたいくつかの市の中から、人材確保、医療施設の完備、教育機関、交通など、様々な条件を考慮して選抜されることになった。
幹細胞とは、分裂し増殖することによって、全くほかの機能をもつ細胞になることができる細胞だという。この研究が進んで、自由自在に身体の各部位を作り出すことができるようになれば、難病に苦しむ人たちや機能を全く失ってしまった部位をもつ人たちの壊れたところを正常な部位と交換することができる可能性がでてくる。
幹細胞の研究については、昨年の大統領選の際にも、ブッシュ大統領とケリー氏によって取り上げられた大きなトピックだった。ブッシュ大統領は、人類の自然性を強調して、倫理上の問題からStem Cell Researchがもつ危険性を取り上げて、研究そのものに反対した。
それに反し、ケリー氏は、この研究を追求することによって、ブッシュ大統領と同じ共和党の痴呆症アルツハイマー型に病んだレーガン前大統領や、落馬して二度と歩けなくなった、映画スーパーマンとして活躍したクリストファー・リーブなどの、すでに機能しなくなってしまった細胞や部分が回復する可能性があるとして、その研究の必要性を強調した。この争点が大統領選にどのように働いたかはわからないが、ブッシュ大統領は再選を果たした。
この大統領選とは別に、同選挙時期、カリフォルニアでは"Stem Cell Researchに$3 billionを投入するプログラム"が提案された。
カリフォルニアのハリウッドは、在職中に国民から高い支持を受けただけでなく、大統領職を終えたのちにもその偉業がたたえられたレーガン前大統領を生んだところだ。そんな彼や家族を苦しめたアルツハイマー病を治癒することができる可能性がある医療として、州民は特に注目をしたのかもしれないが、この提案は指示され通過した。
その結果として、今回サンフランシスコがヘッドクオーターとして選ばれることになったわけだ。
人間としての尊厳、倫理上の問題を取り上げ、幹細胞の研究については、アメリカだけでなく世界的にも、依然大きな議論の渦中にある。そのなかでの出発だが、これによって、州からこの研究に対して約3000億円がおりることになる。ドット・コム時代の終わりから景気が衰退していたサンフランシスコにとって、これは景気回復のための重要なプロジェクトになることだろう。
市の繁栄はもとより、この先進医療が悪用されることなく実践医療の場で活用され、難病などで苦しむ人たちを助けることができる日が来るのを心から望みたい。