サンフランシスコのホームレス

生きる権利、人としての権利

「犬も歩けば、棒ならぬホームレス者に当たる」、といった表現がピッタリ。アメリカ国内に200万人から300万人のホームレス者がいると言われている中で、ニューヨーク、ロスアンジェルスに次いで、サンフランシスコは三番目に多いホームレス者をかかえる市である。その数は、この10年間に約倍増して、現在1万6千人。市の人口は約70万。何とその2.3%がホームレス者ということになる。

ダウンタウンにあるユニオンスクエアのあたりには「あなたのちょっとしたヘルプがホームレス者を救う。あなたの上に神のみ恵みがありますように.....」とかいったメッセージを書いたダンボールを脇に置いて、小銭を請うホームレス者があちこちにいる。小さな子ども連れのホームレス者がいれば、男女カップル、年寄り、二十歳にもみたないような若者、子猫や犬を連れたホームレス者がいる。

「ベトナム戦争の犠牲者です」といったメッセージを書いたダンボールを手にしているベトナム戦争に参加した元兵士のホームレス者は特に多い。何年も続いたベトナム戦争から無事帰還したものの、特別な職技能のない兵士が、職を得ることができず、そのまま、通りで寝起きをする生活者に変ってしまうといった具合。また、車椅子にのった障害者のホームレス者も目につく。

そんなホームレス者に、街を歩く沢山の人達が小銭の25セント玉や1ドル札を与えている。日本では見かけない風景。日本では、ホームレス者を人通りの多い通りやエリアで見かけること自体が少ないし、まして、彼らがお金を請う姿など、見かけることはほとんどない。敗者(?)として隠れるようにして生きる日本のホームレス者に比べ、こちらのホームレス者は生きる権利、人としての権利を主張しているようにも伺える。

市民参加のボランティア活動に加えて、サンフランシスコ市はこういったホームレス者に対して、夕食や宿泊を提供する施設やサービス活動に予算を組んでいる。また、ホームレス者に対して、月にいくらかの援助金も出してもいる。現在、いくつかのホームレス者用アパートの建設も進んでいる。そこでは、技術研修も合わせて行われるとかで、彼らの職場復帰を促そうといった試みだ。

少しずつでも、そういった人たちが、自給生活ができるようになって、本来の生活を取り戻すようになってほしいものだ。ただ、ホームレス者に対するこの市内の待遇の良さを風で聞いてか、ホームレス者がこのサンフランシスコに集まって来るといった状況は、間違いないことだ。

(200/05)
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