長くて険しい坂道がカーチェイスの名シーンを作る。
ヒチコックの監督した映画「Vertigo」、ダスティン・ホフマン主演の「The Graduate」、クリント・イーストウッドのあの代表的映画「Dirty Harry」、マイケル・ダグラスとシャーロン・ストーンが共演した「Basic Instinct」、ロビン・ウイリアムズのコメディ「Mrs. Doubtfire」、マイケル・ダグラス主演のあのスリリングな映画「The Game」。読み上げればまだまだ出てくる。
本当に沢山の映画が、サンフランシスコで撮影されている。ゴールデンゲートブリッジ、ケーブルカー、至る所にある長くて険しい坂道。絵になるところがあちこちに散在しているからなのか。それとも、映画界の人たちが、単純にみんなこの街を好きなのか。映画「The Rock」の中で、ショーン・コネリーの車を、ニコラス・ケージの乗った車が、険しい斜面を車の間をすり抜けながらハイスピードで追う。そして、ケーブルカーと衝突。ケーブルカーがレールを外れて路面を滑っていくシーンはちょっと見物。結局、ショーン・コネリーは逃げ延びて、その場所から姿を消してしまう。
サンフランシスコは、カーチェイスをするには絶好のロケ地。坂あり、路面電車あり。ぶつかりあったり、急斜面でジャンプを繰り返す車。スリルがある。車の運転席からのシーンを見ていただければわかるように、険しい坂道を下る場合、突然、目の前の通りが見えなくなる。道があまりにも急勾配に下がっているためだ。そんなところで、ハイスピードで追っかけっこをやったものなら、車の前輪が遠心力で道から浮いてしまって後輪だけで前進。数秒のちに、ぐっと下がった道に前輪が着地して、その拍子に後輪が跳ね上がる。スリリングなカーチェイスの出来上がりというわけだ。
ゴールデンゲートブリッジだって、スクリーン受けする。オレンジ色の壮大な橋を上半分深い霧が覆ったりすれば、白色とオレンジ色とのコントラストがちょっとしたもの。バックで流れる音楽や出演者の雰囲気、脚本などによって、同じシーンからラブロマンス、スリラー、ドラマ、コメディなどと、いくらでもストーリーが生まれることになる。
サンフランシスコは、限りなく膨らむ可能性のあるシーンを創り出す街なのかもしれない。偶然通りかかったら、ダウンタウンで何やらカメラを据えて撮影をしていた。路上にあるバス停の待合スタンドに、家具を置いたり、装飾をしたりして、まるでどこかの部屋のようにセットが組んである。不思議な感じ。予算の低い撮影なのか、役者さんのほかには、カメラを睨む人と数人の技師さんと交通を整理する警備員がひとり。きっとこのシーンもどこかの映画かテレビのドラマかなんかになって、お目見えするのだろうか。
やっぱりサンフランシスコは魅力的で絵になるのだ!