全身のチョコレートパックまで
バレンタイン・ディというと、こちらでは男性が女性(本命の彼女/ガールフレンド/妻)にプレゼントをする日である。ダイヤモンドの指輪を贈ったり、一抱えもある真っ赤なバラを贈ったり、かわいくラッピングしたチョコレートを贈ったりと、プレゼントの費用や内容は様々。
でもやっぱり、手ごろなところでチョコレートを贈る男性は多い。だからこの時期、ギラデリスクエアとして知られる市内のチョコレート工場が注目を浴びるときでもある。
この工場はイタリア北部にある小さな町で1817年に生まれたドミンゴ・ギラデリによって作られた。彼は小さいときに父親からチョコレートの製造法と商売とをしっかりと教わり、ウルグアイとペルーで最初の店を開いたあと、ゴールドラッシュに引かれて、1849年サンフランシスコにやってきた。そこで、店舗を地道に増やし、やがて、North Point Streetにある一ブロックをすべて買い上げて、チョコレート工場の本社を築き上げた。これが現在のギラデリスクエアである。
ここのチョコレートは美味しいから、彼女へのプレゼントには最適というわけで、男性が詰め掛けるのだ。チョコレートは心臓病やガンの予防に効くという研究結果が公表されたりすると、チョコレート好きとしては嬉しくなってしまう。それにチョコレートのパッケージに、材料はビタミンB6、Cや鉄分、葉酸などのミネラルと書いてあると、何だ体にいいじゃないかと、安心して気軽に手を出すことができる。
ドミンゴの時代には、チョコレートは食品という発想があったに違いない。ところが、昨今チョコレートは単純に食べるだけのものではなくなってきたようだ。温度差によって形を変えるという性質とその甘い香りとスムーズなきめ、手ざわりが美容という分野に活用され始め、チョコレートを材料にした石鹸、リップクリーム、浴用剤、シャワージェル、ローションなどの製品がたくさん出回るようになってきた。
市内にあるスパでは、泥パックならぬ全身のチョコレートパックまでお出まししている。チョコレートに含まれる物質の中には、脳を刺激して幸福感や魅力や興奮を引き起こすものがあるとか。また、気持ちをリラックスさせるものもあって、精神衛生上の効果も期待して、スパでチョコレートが活用されるわけだ。
チョコレートはもう食べるだけのものではなくて、心も体も美しくする美容商品になりつつある。プレゼントを探し回る男性たちの中には、単純に食べるチョコレートではなくて、美容に効くチョコレートを探すひとたちも多いことだろう。
ドミンゴが聞いたらびっくりするかもしれない。でも彼の愛したチョコレートが食べるだけでなく、多くの女性により親しまれて喜ばれるのだから、やっぱり草葉の陰でニンマリと微笑んでいることだろう。