歯磨き

歯の病気に対する予防意識が高いアメリカ人

先日、テレビでニュースを見ていたら、犬や猫などを相手にする動物の歯医者養成クラスの需要が増えてきているという話題を報道していた。
サンフランシスコやその周辺都市で動物のための歯科医として開業して、忙しくやっている人たちがいるという。虫歯や歯周病などの治療だけでなく、その予防療法や歯並びの矯正といったことまでしているというから驚いてしまう。まさに人間顔負けである。

アメリカ人は歯の病気に対する予防意識が高い。だから、歯磨きのほかにデンタルフロスを使って定期的に歯の隙間を掃除する習慣がある。それに加えて、歯科保険がカバーしてくれるから、半年に一回歯科医を訪ねて、歯垢をとるクリーニングをしてもらう人がほとんどだ。
クリーニングをしたあと、歯科医が口の中を点検して虫歯などの病気がないかチェックをし、何かの病気がみつかればそのときに治療をする。こんなふうにして半年ごとに歯垢の除去と定期検査を繰り返すから、歯の病気になることが少ないし、たとえ何かの病気になっても大事に至っていないから、治療に多大な時間や費用をかけなくても済むことになる。

こんな風にして、歯をいつまでも健康に保つというわけだ。また、永久歯がすべて生え揃ったあとしばらくすると、ブレイシーズという針金のような金具を歯全体にあてがって、定期的にその針金を一定方向に締めていくことによって歯並びが揃うように矯正する子供が多い。
だから、アメリカ人の歯並びはとてもよい。出っ歯の人もいなければ、日本ではかわいいと言われる八重歯が飛び出した人もいない。

たかが歯並びと思うかもしれないが、これは歯のかみ合わせをよくするから、消化を助けるだけでなく、それぞれの歯や歯茎に不均衡な圧力がかからないようにして歯周病などの予防にもなるようだ。
これらは歯科医療の歴史や保険制度、歯の役割や美的意識といった歯に対する考え方などがすべてからんでの結果だろうが、歯科分野での予防意識と医療がとても進んでいると言える。

人間でもこれだけ進んでいるのだから、動物にだってその余波がきても当然なのかもしれない。昨今、日本でも歯科医療の分野で、単なる事後治療だけでなく、少しずつ予防医療にも力を入れるようになってきていると聞くが、まだまだ、年をとれば歯が悪くなるのは当たり前だと考えている人が少なくないのではないだろうか。痛くなってから歯医者に行くという習慣を、歯や歯茎が痛くならないように予防して、その定期点検に歯医者へ行くという習慣に変えていけたら素晴らしいだろう。

ゴールデンゲートパークを飼い主と一緒に散歩している犬や、家の玄関口の陽だまりで昼寝をしている猫よりも、私たち人間の方が歯垢がたまりすぎていたり、虫歯があるなんて、ちょっと笑えた話ではない。

(2004/08)
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