サンフランシスコの公園

Farallon Islands

先月末、くじらがサンフランシスコ湾に迷い込んできた。
この突然の訪問のニュースを聞いた市民や観光客らが、その姿を人目見ようとあちこちの湾岸沿いに並んだ。予期していなかった訪問だけに、目撃できた人たちはラッキーとばかりにしきりにカメラのシャッターを押していたようだ。

昨年は親子で湾に迷い込んできたくじらたちがいた。太平洋に出るために西に向かって泳がなければならないところを、帰り道を間違えて、湾を北東に進み、川をどんどんさかのぼり挙句の果てにサクラメントまで上っていき、くじらの保護団体の誘導でなんとかUターンして引返していくという事件も起こったほどだから、迷子はときどきおこるようだ。今月に入ってからは、湾にいくつか突き出した桟橋の下に大きなくじらの遺体がひっかかっているのが見つかったりもした。

くじらとサンフランシスコ。何か全く関係がないように思われるけれど、実は、サンフランシスコ湾から40kmばかり離れた距離にある太平洋に浮かぶ島々(Farallon Islands)のあたりではくじらがよく観られるらしい。晴れた日にはサンフランシスコから西に向かって見渡すと肉眼でも見えるこの島々。そのあたりまで出かけるくじらツアーが定期的に組まれているほどだ。くじらファンにとっては、潮を噴き上げ、自由に泳ぎまわるくじらを目の前に体験できるこんなツアーはまさに醍醐味と言えそうだ。

くじらは海や水族館で観賞する珍しい動物。そう思っている人たちがほとんどだろうか。そんな人たちの前でくじら肉を食べるという言葉はタブーなのかもしれない。
絶滅に近い種類のくじらがいるために、保護団体からするとくじら肉を食べる人たちは敵視されてしまう。くじらにもいろいろな種類があって、たくさんいる種類のくじらを実は捕鯨しているのだと言っても、きっと聞き入れてはもらえないのだろう。

ところで、その肉の美味しさや豊富な栄養価などは考慮されるに値しないのだろうか。これだけ幅広く健康に関する知識をもつようになり、健康を維持するために努力を惜しまない人たちがでてきているのだから、牛肉や豚肉などに比べて高蛋白、低脂肪、低カロリー、低コレステロールであるくじら肉は、体にとってよい肉だと考えることはできないだろうか。
それに、血中のコレステロールを下げるといわれている不飽和脂肪酸を含んでいるから、ハートアタックで亡くなる割合の高いアメリカなどでは、毎日の食生活に少しぐらいは取り込むことを考えてもいいような気もするけれど。

くじら肉を食べる習慣のない人たちがたくさんいるなかで、こんなことを書くのはやっぱり不適切だろうか。
迷子になってサンフランシスコ湾にやってきたくじらから、少し考えさせられてしまった。

(2008/05)
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