サンフランシスコのケーブルカー

馬の事故がケーブルカー誕生のきっかけ

サンフランシスコといって思い浮かべるもののひとつがケーブルカー。観光で訪れる人たちは必ずといっていいほど乗車をしてみる乗り物だ。路面にある線路にのってチンチンと音のする警笛をビルの合間にこだまさせながら市内を走り抜ける。市内を走るケーブルカーは、Powell-Hydeライン、Powell-Masonライン、Californiaラインの三つのルートを走っている。

観光客がよく乗車するのはマリーンにあるギラデリ・スクエアの近くまで行くPowell-Hydeラインかフィッシャーマンズ・ワーフの近くまで行くPowell-Masonライン。両ラインともにダウンタウンにあるマーケットストリートとパウエルストリートが交わる地点から発車をする。

ユニオン・スクエアの近くでショッピングを楽しんだ観光客が、ここから次の観光スポットを探してケーブルカーに乗ってマリーンに向かうというわけだ。1869年、その頃重いストリートカーを引っ張って市内の急斜面を上っていたのは馬だったいう。ある夏の日、悪天候のために路面が滑りやすくなっていたこととストリートカーがあまりにも重かったために、上りに向かって馬が引っ張っていたストリートカーが逆方向に馬を引きずって滑り出してしまう。結局そのために5頭の馬が死んでしまったとか。
遠く英国からやってきていたハリディはその様子を見て、彼の父親が英国で特許を申請したワイヤーロープを使ってこのストリートカーを引っ張るシステムを思いつく。

そんないきさつから生まれたケーブルカーは、文字通りケーブルで引っ張られた車。線路に沿って地下をはうケーブルがケーブルカーを動かす。車体自体にはエンジンがなく電気や燃料などを一切使っていない。走るときにゴロゴロという音をたてて走る。ケーブルカーについての歴史やそのシステムをもっと知りたい人は、Powell-Masonライン上にある「Cable Car Barn & Powerhouse」を訪ねてみるといいかもしれない。

もう17、8年も前のことになるだろうか、始めてサンフランシスコを訪ねた際に、写真撮影のためにギラデリ・スクエア近くに停まっていたケーブルカーに飛び乗ったときのこと。シャッターを押すのに時間がかかってしまったが、ケーブルカーの運転手さんは出発時間を延ばして、私達の写真撮影が終わるのを気長に待ってくれた。
ちょっとした親切でいい気分になったことを忘れない。そんなやさしい運転手さんの横に立って、沿線のビルやレストラン、ビクトリア時代に建てられた家々をぬって、急な坂道をゆっくりと上っていくケーブルカーから、刻々と動くサンフランシスカンの生活と街の様子を眺めてみよう。タクシーやバスの窓からとはちょっと違った風景が見えること間違いなし!

(2003/05)
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