サンフランシスコ

セラチア菌感染症

とても信じがたい話がある。アメリカ政府が自国民を使って細菌実験をしたという。
007の映画にでも出てきそうなエピソードだ。でも映画と決定的に違うところは、そんな計画が誰によっても阻止されることなく実行されてしまったこと。

1950年9月末。小さな軍用艦艇からサンフランシスコにうまく流れるように天候を考慮したうえでセラチア菌というバクテリアを空中に大量散布したという。
記録によれば、この細菌はサンフランシスコを中心に、北はサウサリート、東はバークレイ、オークランド、そしてサンリアンドロまでに及び、南はデイリーシティーまでと広範囲に及ぶ地域にばら撒かれたという。この実験は実際に戦争で細菌攻撃を受けた際に、何が起こるかを知るためというのが目的だったとか。

この散布があってからまもなく、肺炎のような症状を訴える治療の困難な感染症患者11人が市内にあるスタンフォード大学病院を訪れたという。そして、のちに一人はセラチア菌によって心臓弁膜が侵されたために尊い命を失うことになった。スタンフォード大学病院はこの発生があまりにも突発で異常だったために、当時の医療ジャーナルにその詳細を記述したほどだそうだ。

1976年になって、やっとこの人体実験が行われたことが暴露された。その情報から、感染症専門家たちは60年代、70年代に起こった静脈内投与のドラッグ使用者間で発生した心臓弁膜の深刻なセラチア菌感染が、その人体実験による影響を受けているのではと疑っている。なにしろ1950年のこの隠された実験のまえには、セラチア菌はベイエリアには住んでいなかったというから、この人体実験の影響を疑うのは当然のことだろう。

アメリカ政府高官によれば、この実験が行われた当時、セラチア菌は深刻な病気を起こさないと信じていた。だから自国民を相手にでもこんな細菌実験を実施したという。ところが、現実にはその実験が何人かの死者をもたらしているし、今でもそのためにセラチア菌感染症に悩まされている人たちがベイエリアにいる。
アメリカは自国民を守るために、自国民を使って実験をしたことになるが、予測もしなかった皮肉なしっぺ返しがやってきてしまった。人が犯した間違いによって、取り返しのつかない犠牲と被害が生まれたことになる。

昨今、世界的にテロ活動が活発化するなかで、生物化学兵器の危険性が討論されている。
またもや、人為的に、この実験のような事が本当に殺人を目的として行われる可能性が生まれてきている。この時勢をなんと理解していいのだろうか

(2007/08)
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