サンフランシスコのかぼちゃ

健康志向で関心

かぼちゃと言えば、ハロウィーンの飾り物という観念がある。食べ物だという認識はとても薄い。
黄色いかぼちゃを買ってきて、中身をくりぬいて種を掘り出し、かぼちゃに彫り物をしていく。この黄色いかぼちゃは身が比較的薄いので、種を取り去るだけで、いろいろな表情をした顔が一番多いが、決めたデザインに従ってくり抜くのが簡単。夜になるとそのかぼちゃのなかにキャンドルを灯す。目や鼻、口の部分をとおして光が漏れ、ぼ~っと不気味な顔が玄関先に浮き上がるといった演出だ。

アメリカ料理のなかにかぼちゃの料理はあまりあがってこない。新鮮な食材に固着し、さまざまな異国の味をアクセントに取り入れたりして、アメリカ料理を幅広く変化させるというカリフォルニア料理を手ける市内のレストランでも、かぼちゃ料理を出すことは稀。まして自宅でとなると、サンクスギヴィングやクリスマスのホリデイフードのメニューに欠かせない、蒸したり煮たりしたスィートポテトをつぶしてブラウンシュガーやシナモンなどで味付けした料理があるが、スィートポテトの換わりにかぼちゃを使ったりする人たちがときどきいる程度で、かぼちゃを家庭で料理して食べる人は珍しい。パンプキンパイを除いて、かぼちゃを使った料理のレパートリーが狭いことが原因しているのかもしれない。

その色からして予想できるように、皮膚や粘膜の抵抗力を高めるといわれるカロチンを多く含んでいるかぼちゃ。
肌のかさつきを予防したり、白内障やボケ防止に役立つとも言われている。風邪をひきやすい人たちにもお勧めらしい。それに、カロチンだけでなく、ビタミンB1、B2、CやEにも豊富とか。ビタミンEはしわやシミをできにくくするというし、繊維質にも富んでいるから便秘予防になり、吹き出物を少なくしてくれそうだ。肌をきれいにして、まさに若返りに貢献する美容食でもあるようだ。

そんな栄養学的美点を知ってか、健康志向にしたがってか、その種を食べる人たちが増えてきている。乾燥させた種に塩やガーリックパウダーをふりかけてバターで炒めたものなどをおやつ感覚でつまむといった具合だ。種からだけれど、これを機会に食品としてのかぼちゃの活用が増えていくのだろうか。

10月31日はハロウィーン。仮装パーティ用の衣装選びに加えて、これぞ個性とばかりに各家々の軒先を、競うようにして薄気味の悪いデコレーションで飾り立てる季節。

健康という言葉に敏感なサンフランシスカンだから、かぼちゃはそんな飾りの一部という見方だけでなく、体によい食べ物として目を向ける人たちが、もっともっと増えていってくれることを願ってしまう。

(2007/10)
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