食品のコレステロールだけを目安にしない
コレステロールが発見されたのは170年も前のことで、動物の胆石から発見されたので、Chole(胆のう)とSterin(脂肪)の合成語です。その後人体の各組織、特に脳や血管などの重要な構成成分だということ、性ホルモンやステロイドホルモンの材料だということもわかり、人体にとってたいへん有用なものだと分かってきました。
一方、コレステロールは動脈硬化を促進するということが言われ、目の敵にされてきましたが、最近では、いや善玉コレステロールもあるのだ、と何が何だかわかりません。
私たちは「今日は悪玉コレステロール何g、善玉コレステロール何g、必須アミノ酸の○と△を何gずつ、ビタミンはAとEを何gずつ食べた。明日はビタミンCとDを食べよう」と生活しているわけじゃありません。
食品を試験管の中で科学的に分析すれば、なるほどコレステロールの多い食品、少ない食品ということはあるでしょう。しかし身体は食品のコレステロール以外に体内でもコレステロールを作っていますから、食品のコレステロールだけを目安にすると間違えます。第一、食べた食品の吸収率が人によって異なりますから、吸収のよい人は、検診で調べる血中のコレステロールはちょうどよくても、たくさんの皮下脂肪となって肥満しているかもしれないし、うんと痩せているのに血中コレステロールはばかに高いという人もいます。
中にはいくら食べても太りもしないしコレステロールも高くない、痩せの大食いもいます。結局、私たちは必要な栄養素を食べたり不要な栄養素を食べなかったりしているわけではないし、食べたg数がそのまま検診の数値に反映されるわけではありません。
どうしたらよいかといえば、賢い母さんや奥さんが、安くて新鮮な材料を調理してくれたものをきれーに残さず食べたらよいのです。そして賢い母さんや奥さんは、TVや雑誌などで医学博士や栄養学博士が次から次へと流す、あれが身体にいよいとか悪いとかの食品情報の99%以上が、一時の流行(ファッション)に過ぎないことを、それこそ肝に銘じて知るべきでしょう。
ごく最近では、動脈硬化が進行するのはコレステロールや老化現象とは実に関係なく、ある傾向をもった人々にのみ発症するひとつの病気なのだ、という説も登場しています。こうなると悪玉コレステロールも脂肪の高い食品も高血圧も、直接には無関係となり、さっぱりしちゃいます。
ただ大ざっぱに言って、動脈硬化を促進させる因子には、コレステロールが高いという他に、血圧が高い、血糖値が高い(糖尿病)、尿酸値が高い(痛風)、肥満である、などが数えられており、この五つくらいは、例外はあるにしても大体確かですから、特にその二つ以上を現にもっている方は、やはり生活改善が必要です。
御両親、御兄弟が動脈硬化に関係する病気で若くして死亡している場合は特にそうです。高血圧を是正するために降圧剤を服用するとコレステロールが上がってしまうなどということもあるので、くすり、くすりといわず、食生活を改善していくのが基本です。
と、話がもとに戻ってしまいましたが、これを読んだ方はもう「何が何g。何が何g。足りないものはビタミン剤で」という「賢い母さん」は卒業しているはずです。