20.関節リウマチ・痛風。いかに「副腎皮質ホルモン」を使わないで寛解状態を維持するか。

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身体の内部のアレルギー反応が異常におきてしまう病気

前回述べた関節痛は、よく「変形性関節炎」と呼ばれたり、「五十肩」と呼ばれたりする種類のもので、いわば疲労性の捻挫です。内科的な病気とは直接関係ありません。今回の関節リウマチや痛風は、関節の痛む内科的な病気の代表的なものです。

これらは漢方では痛風・歴節風などと呼ばれていました。風というのは風邪(ふうじゃ)の風で、あちこちの関節が腫れて痛んでは、またひいてゆき、また腫れる、といった症状を、いった症状を、古人は「風」による「痛」と表現したのでした。

現代の私たちからみると全然異なる、脳卒中で突然四肢が麻痺したりする症状も、その突然さから「風にあたる=中風」と表現したくらいです。「歴節風」というのは「関節を歴訪する風」という意味です。
「関節を歴訪する風」という意味です。現代になり、病気の実態が明らかになるにつれ、「関節リウマチ」は独立した病名となり、高尿酸血症とかかわりのある関節痛にだけ「痛風」という病名が残りました。

この二つの病気は直接何の関係もないと考えられていますが、前者は女性の病気、後者は男性の病気と、かなりはっきりしていますから、将来遺伝子などの研究がすすめば、意外と関係のある病気なのかもしれません。また、関節リウマチの患者さんには「女王様のような生活をしてください」といいますし、痛風の風の患者さんには「貴族のような美酒美食の生活がいけないのだ」と、これまた対照的な生活指導がされるのも、面白いところです。

さて、関節リウマチは、全身性エリテマトーデスなどともいい「膠原病」として一括される病気で、ひと口で言えば、身体の内部のアレルギー反応が異常におきてしまう病気です。いまのところ副腎皮質ホルモンしか決定的に症状を寛解するてだてがありませんが、その副作用がはっきりしてきた現在、いかに「副腎皮質ホルモン」を使わないで寛解状態を維持するかが、私どもの腕とされています。

当院にこられる関節リウマチの方の半分は、病院でひととおりの検査や投薬・注射などを受けている方です。これらの方は、ステロイド剤を現在も使用している方と、ステロイド以外の金剤や抗炎症剤を使用している方とに、二分されます。ステロイド剤は勿論、他の薬剤も副作用が心配ですし、現に副作用が出ている方もあり、これらの薬のかわりに漢方薬で何とかならないか、と相談に見えるわけです。

関節リウマチはなおるのか?と聞かれれば、これは現時点では東西医学どちらを、或いは両方を駆使しても「なおりません」。関節リウマチを含む膠原病と診断されるような病気は、身体全体にわたるその方のある特徴、それこそ「体質」としかいいようのないひとつのタイプであって、それをそっくり変えてしまうことは、今のところできません。

「生活病」「環境病」という側面がとてもつよい

従来のステロイド剤を中心とした治療には限界があり、現在全く新しい免疫療法により、2010年までに関節リウマチを制圧する、という景気のよいニュースも一部では流れていますが、政治家の公約くらいに考えていたほうがよさそうです。

一歩退いて、「これ以上わるくしない」「進行するにしても、ずっと先のばしにする」という目標にすることを患者さんが納得してくだされば、漢方的手段で現代薬を大幅に減らし、場合によってはゼロにし、なお症状は少しも悪化しない、ということは十分に可能です。それどころか、「一生つきあわねばならない」という視点からみれば漢方薬の方がずっと気がきいているといえます。

一方、まだ未治療の、「これは関節リウマチらしいけれども、これから進展してゆくか予断できない」という方々。この方々は、落ちついて漢方的手段に頼ってよいと思います。だいたい病院へ行くと、ろくなことにならない。
従来は関節リウマチ治療ピラミッドといって、副作用のない軽い手段から始めて、それでもダメなものは次、それでもダメなものは次、と順序を踏んでいたのですが、最近ではステロイド剤や金剤といった、従来ならピラミッドの頂点近くにある薬を、いきなり「すそ野」の関節リウマチ入門段階の方に使う手法が始まっています。

初めから「強い手段」を使って進行性のリウマチとそうでないものをフルイにかける、というのがその理由ですが、危なかしくて見てられない。進行性でないものまで引きずり込んでしまいそうな危惧を感じます。

これからリウマチの門をくぐり、本格的なリウマチになるのか、それとも引きもどすことができるのか、という段階の方を随分たくさん診断しましたが、漢方的手段ではとても押さえられず重症化した、という例はほとんどありません。
中等度の立派なリウマチの方で、ハワイに遊びにゆくとその間はケロッとして痛みのなくなる方がいます。リウマチはそうした「生活病」「環境病」という側面のとてもつよい病気なのです。こうした経験からいっても、いきなり「強い薬」を用いる最近のやり方には反対です。

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