11.自分の仕事の半分を人に委ねる。

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お茶の時間

年を重ねて初めてわかることがたくさんあります(って、ものすごい年寄りみたいな言いぐさですが、私は私自身が感じているよりもずっと若い年齢らしいです)。季節や天気のいい日の有り難さや雨の日の愉しみ方や人との距離感や自分なりにやっていいこととやってはいけないことや。その中のひとつに「自分の仕事の半分を人に委ねる」ということがあります。

私はもう何年も、自分の仕事を人に委ねるということが出来ない人間でした。仕事が好きといえばカッコいいですが、それより何より自分の領域に人が入ってくることを恐れていたんだと思います。加えて誰かに自分の仕事を委ねて、その人のほうが自分より有能だった場合、自分はどうなるんだろう?
そんな不安もありました。必然的に仕事は膨らんで、私の手には余る量になっていったのです。寝る間も惜しんで必死に片づけているのに、いつまでも片づかない仕事の山。それなのに新たな仕事を受けて、ひとつが片づくとふたつ増えるという具合に、山積みになっていく仕事。そして体を壊しました。

結局、自分を信頼してくれた多くの人々に迷惑をかける結果になり、そして、初めて他の人に仕事を委ねるということを経験したのです。体が回復するのと比例して、私は人に仕事を委ねるという行為について新たな認識を得ました。誰だってひとりだけで仕事をこなせるわけはないという事実。
個人差はあってもひとりの人間が抱えられる仕事量は決まっているという現実。何でも自分でやりたいという傲慢が回りに与える迷惑。何より自分がいなくても代わりはたくさんいる、自分が出来なくても仕事はきちんと回っていくという発見は私を愕然とさせました。そして私は「こんなこと、もう辞めよう」と思ったのです。自分の身の丈を認識せずに声をかけてくれたすべての仕事を自分のものにしようとする欲張りからは、卒業しなきゃって。

もちろん、それでも最初の頃は、なかなか卒業できませんでした。何でもやりたい病に引っ張られそうになる自分を無理やり押し止めて、3回に1回は仕事を断るようにしたのです。そうしているうちに、自分の本当にやりたい仕事、やるべき仕事が見えてきました。そして、これは自分がやるよりも違う人がやるほうが向いているという仕事もわかってきたのです。

すごく楽になりました。自分以外の誰かでも出来る仕事は誰かに任せるか、もしくは誰かと共に進めていけばいいのです。そして自分には出来ない仕事は、よりそれが向いている人にしてもらえばいいのです。こんな簡単な現実をずいぶんと長い間わからずにいた自分を恥ずかしくも思いますが、それは結局、若さゆえの欲張りだったのだと認識しています。

あなたは、あなた以外の誰かにも出来る何かを抱えて、うなってはいませんか?誰かに何かを委ねる勇気。それを持てれば、世界は自分の色に変わります。そして、自分だけに出来ることも見えてくるのです。

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