17.忘れてしまったことは、忘れていいこと。

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Hana-Mauiの鳥

最近、同世代の友達に会うと、先を競うように言い合うのが「物忘れ」のこと。自慢をしているわけではないですが、本当に、怖いくらいに、年々、物忘れがひどくなります。脳がゆるやかに老化しているのでしょうね。ヤレヤレ……などと思っていたら、ふと、思い出したことがあります。

今からもうずいぶんと前。体も、もちろん脳も元気いっぱいな頃のことです。ある先輩が言いました。「私ね、最近思うのよ。忘れてしまっていることって、覚えておかなくてもいいことなのよね。絶対に覚えておかなきゃいけないことって、不思議と覚えているものだもん」私より10歳以上年上の先輩の発言に、当時は「物忘れは、年のせいじゃ?」などと突っ込みを入れていましたが、この発言、今思えば、確かに!と思うのです。

たとえば、私は恋愛の絶好調期、ものすごくうまくいっているときに、思います。あぁ、こんなに楽しいこと、ただのひとつも忘れずに覚えておきたい。彼の発言も、行った場所も、この会話を全部覚えておきたい。でも(後にうまくいかなかったというハンデは差し引いても)、覚えていることはほんのひと握り。忘れてしまったことのほうが多いくらいです。
他にも、友達や先輩にかけてもらった言葉も、旅先で食べたすっごい美味しいものも、本や映画のワンフレーズも、忘れたくないことがいっぱいなのに、忘れてしまっていることのほうが、きっと多いと思います。でも、そんな中でも必ず覚えていることもあるのです。中には忘れたいこともあるし、多少記憶が改ざんされている場合もあるのですが、必ず覚えていることがあります。それは、ほとんどの場合、時間がたってもきちんと覚えていることなのです。

と、ここまで書いて、またひとつ覚えている言葉に気づきました。大好きな小説家に言われたことがあります。「たとえば、紀行文を書くとき。旅から戻った興奮を少し寝かせたほうがいいよ。(旅から戻って)すぐに文章にすると、無駄なことまで言葉にしてしまうから。僕はいつも、長くて1週間、短くても2~3日は文章にしない。そうすると、無駄なことはきれいに忘れるから。覚えておかなきゃいけないことは、不思議と覚えているもんなんだよなぁ」

そう言われて後、私も実践している手法です。人間の心というのは、実はものすごく感度のいいものなのではないでしょうか。自分でも気づかないうちに、覚えておくべきこととそうでないことをきちんと取捨選択できているのかもしれません。アレもコレも忘れちゃうと焦るより、忘れていいことは忘れる程度のこと、覚えていることをきちんと大切にしようとスイッチを切り変えてみませんか?

もちろん、仕事や日常の中では、どうでもいいことでも覚えておかなきゃいけないことも多いですが、それは、仕方がありません。メモ魔になって乗り越えて、その他のことは「忘れてしまうことは、忘れていいこと」というナチュラル方程式で考えてみると、コトの真実が本当に良くわかったりするから不思議です。

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