2.仕事のスイッチを完全オフに。

sponsors
Hana Maui

恥ずかしながら、ここ数カ月、私は私を持て余していました。なんだか全然わからないのですが、どことなくうっとおしくて、なんとなく沈み込む。そんな自分に驚いて、少し焦ったりもしました。たとえば、いつもなら全然気にならない言葉にひどく反応したり、電車で本を読みながらポロポロ涙を流したり、料理を作りながらボーッとして手とオデコにひどい火傷をしたりもしました。

感受性が研ぎ澄まされて、ちょっとしたことに感じ入る雰囲気はティーンの頃に戻ったようで、少し楽しくもありましたが、実際は30代も半ば過ぎ。そこまで感受性が強くても持て余す年齢なのです。友達に相談すると「更年期障害?」とか「恋愛でも始めたんじゃないの?」などと言われましたが、あるとき、年上の女性に「仕事のし過ぎよ」と言われました。そう言えば、今年に入ってからずっと仕事をしています。土曜日や日曜日は一応は休みですが、土日もほんの30分とか1時間という短い単位で仕事をしていました。

彼女は言いました。「私もあなたくらいの年に仕事が面白くて、体力も充実していたから次々とこなせて、どんどん前向きに取り組んでたの。ところが、ある朝突然に、いまのあなたのようになったのよ」。彼女、桃子さんは、外資系広告代理店でマーケティングのチーフとしていまも活躍する女性です。正確な年齢はうかがったことがありませんが、お子さんが大学生ですから、50歳と少しというあたりでしょうか。桃子さんの場合は、毎日毎日、涙で小さな水たまりができるくらい泣いていたそうです。

別にものすごく悲しいというわけではなくて、ただなんだか寂しくて、やるせなくて仕方がなくて、気がつくと泣いていたと言います。「言っておくけど」という前置きの後に「そのとき恋愛をしていたなんてことはないのよ」と笑いました。
私だって、恋でもして悲しくなったりするのなら、少しは気も晴れるし、確信犯的安心感もあります。でも、そんなことはなくて、わけもわからずただ悲しいから怖くなっていたのです。私は慌てて彼女に聞きました。で、桃子さんは、どうやってその闇から抜け出したの? 懐かしいものを見る目で彼女は言いました。

「休みを取ったの。1週間」当時結婚して、子供もいた彼女は、会社に1週間の有給をもらい、夫に子供をお願いして、ひとりで奈良に行ったのだそうです。突然に仏像を眺めてみたくなった。そのインスピレーションを素直に受け止めて、ひとり旅をしました。ポケベルで会社から呼出しがかかっても一切コンタクトは取らず、ひとり旅3日目にはポケベルのスイッチも消しました。
夫にわがままを言って「悪いけど旅の間だけ電話連絡はなしね」と言うと、夫は笑ってわかったと言ってくれたそうです。その旅の間中、仏像を見ては泣き、新緑の匂いを嗅いでは泣き、小学校から帰ってくる楽しげな子供たちを見ては泣き、泣いて、泣いて、泣いて過ごしたと笑って言いました。

「でね。東京に戻ってきたら、すっかり直っていたの。ポケベルを切っていたことはボスにこっぴどく叱られたけど、仕事はきちんと回っていたし、子供は元気に学校行ってたし、夫も普通に仕事してたし。私ひとりいなくても、社会はきちんと回るのねって思ったわ」

それから桃子さんは、よほどのことがない限り土、日は仕事をしません。なんとなく仕事をしなければいけなそうなときは、なるべく人に頼みます。それが無理なら、ウイークデーに残業するか、朝1時間早く出社するか。それでもダメな数少ない場合だけ、自分の休みの時間を仕事に譲ってあげると言いました。
ポケベルも、携帯も切って、自宅の電話も留守電にして、メールものぞかずに週末を過ごすといいます。オンとオフの完全なる線引き。それが彼女を闇から救ったのです。

で、私の話ですが、私も桃子さんにお会いした翌日に、早速、家族と近しい仕事仲間に2ヵ月後の完全休養を宣言しました。1ヵ月先までは、すでに仕事が決まっているのですが、その後はとりたてて決まった仕事はないのです。初夏の1ヵ月は完全に休む。そう決めて宣言したら、泣き泣き病から開放されました。悪友たちは「そんなに簡単なことだったのか」とバカにしますが、そんなに簡単なことだったのです。本当に。

あなたもわけもなく、うっとおしい気持ちになってはいませんか?それって、もしかしたらオンとオフの切り替えがうまくいってない?無理してもオンとオフはきっちりと線を引くべきです。絶対に。経験者の私が言うのですから、間違いはありません。

まずは土・日に仕事用の携帯電話をオフにすること。
そこから始めてみませんか?

sponsors

シンプルスタイル Index