お腹とその裏の腰の冷えは万病のもと
冷え性は若い時からにせよ、中年以降にせよ、女性特有のものと、思っておりましたが、私自身中年になって、若い時には人ごとだった冷えを、自分の身体で感じることになり、「これが冷えというものか」と感心したり情けなくなったりしています。
男性でも冷えに悩まされている方は沢山いるということです。どこで一体そんなに冷えを感じるのだろうか。頭や顔が冷たくて、と相談される方はまずいないでしょう。
首筋スースー、上背部ゾクゾク。これは風邪の初期症状でよくある一過性の冷え。
肩口が冷える。これはとても多い。子供の頃、お風呂に入るとき肩を出していると「肩までよく暖まりなさい」と叱られたものですが、肩を入れるとそう長くは入っていられない。
肩を出して長く入っていると足や腰が暖まります。顔と肩が放熱器になっているようです。
コホンコホン、ホンゼイゼイのいつまでも続いている人や、50肩などこじらせている人は、夜眠るとき肩口の放熱器が開けっ放しになっていないかどうか、かけ布団を工夫してください。
手指のシモヤケがすぐできる人。女性に多いですが、漢方的には血症の人が多い。指が真っ白に冷たくなるレイノー症状を呈するような膠原病的な体質とも関係がありそうです。胸が冷えるとはあまり聞きませんが、頑固な咳がいつまでも続くとき、昔こどもの時にお母さんに作ってもらった芥子湿布のように胸を温める湿布がとても有効なことがあります。
お腹とその裏の腰の冷え。これが一番多く、万病のもとかもしれません。胃腸障害、尿路障害、婦人科諸器官の障害---数字で言いにくいけれども、おそらく5割以上は冷えが直接間接に悪さをしていると言ってよいでしょう。腹巻やホカロンであたため、冬は冷たいビールはやめておきましょう。
脚は、膝がよく冷えます。これはすぐ痛みにつながります。暖かいサポータを。「ふくらはぎ」は上半身の肩口と同じような放熱器のようです。「つれる」という方がとても多い。膝用のサポータをずらしてここにしておくとよい。
足先の冷え、しもやけは、手指の冷えと同じ。足の先が冷えるからといって、ソックスを重ねばきにすることは、得策ではありません。モロモロしちゃって危ない。むしろ「ふくらはぎ」を暖めることで足先も暖まります。ついでながら、冷える場所を選んで、そこの他より厚くおおうことが必要です。
身体中全部おなじように厚着すればよいというものではありません。人間の身体の不思議なところです。脚で冷えた静脈血がお腹に還流して、腹や腰の冷えの原因になるという説もあります。
「鶴はなぜ一本足で眠るの」という本がありますが、答えは「脚の冷えを最小限にする知恵」というものです。二本とも冷やしたら身体に還流する血脈が冷たすぎて、鶴が冷え性になってしまう、という答えです。ホントにそうかも知れませんよ。
冷えを内側から(冷たいものを食べない)、外側から守る以外、漢方薬の附子に代表されるような熱剤の力を借りることもできます。そして何より、都会で生活されている方は、身体を動かしてください。コタツで丸くなっていては、いつまでも冷えは治りません。