16.上気道アレルギー。肝-肺、脾-肺、腎-肺、というように、薬方を組み立てます。

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培菌の格好の培地となる

気管支喘息、アレルギー性鼻炎(通年型と花粉症のような季節型)、蓄膿症、喘息というほどではないが咳に悩んでいる方、慢性の咽頭炎、年中風邪っぽい方、咽頭は耳管と通じていますから、中耳炎をくりかえす子供も、上気道アレルギーといいます。つまり鼻・喉(のど)・気管・気管支と、空気が通る道の粘膜の過敏症です。

こうしたアレルギーの粘膜は、しばしば培菌の格好の培地となりますので、蓄膿症や扁桃腺炎や慢性気管支炎とも深く関連しています。

抗生剤を服用しても、培地が変わらなければ解決にはなりません。以前は蓄膿症や扁桃腺肥大の子供はさかんに手術されましたが、手術は解決にならないばかりか、副作用もあるということで、最近ではめったに行われません。

これらのアレルギーは、皮膚のアレルギー、典型的にはアトピー皮膚炎とも密接につながりがあり、喘息が成長と共に消えたらアトピー皮膚炎が全面に出てきた、などという例が非常に多いものです。
上気道アレルギーの中でも、鼻炎と喘息が交互に出現する患者さんもたくさんいます。つまり「個々の症状に対処療法を施しながら、子供の抵抗力ができてくるまで何とかもたせる」というやり方は、最近ではあまり有効ではなくなっていているのです。

「中学生か、高校生になったら治りますよ」とうけあいにくくなってきました。といって、喘息には小児科・内科、中耳炎には耳鼻科、アトピーには皮膚科、というように数カ所の病院へ子供をひっぱりまわし、それぞれの病院から抗アレルギー剤の投与を受けることは、バカげています。

漢方的には上気道アレルギーは「肺」の病症としてとらえますが、多くの場合、肺だけを目標に薬を組み立てることはありません。自律神経の働きを代表している「肝」、消化吸収能力を代表している「脾」、子供やお年寄りの抵抗力の強弱を代表する「腎」の三つが、「肺」と関連があると考えます。

ですから、同じ喘息や鼻炎でも、それぞれの患者さんの特徴をとらえて、肝-肺、脾-肺、腎-肺、というように、薬方を組み立てます。
漢方医学が個人に対応する医学といわれる所以であり、一個であれば全身をみる、全身医学といわれる所以です。

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