3.漢方薬と現代薬。期待されるアレルギー領域での活躍

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薬のフィールド

本場中国では、現在、医師の数でいうと8割が西医(現代医学専攻)、2割が中医(中国医学・漢方医学専攻)といわれています。病院もその割合であるわけですが、病院の入り口は、右側の受付は現代医学、左側の受付は漢方医学、となっている施設もあります。

日本の場合、大病院で漢方薬が使われ始めても、まだそこまではいってません。しかし、大病院でもいずれそうなることだろうと、私は思います。50年くらいはかかるでしょうが。
当院にこられるみなさんは、ほとんどの方が漢方的治療を求めて、わざわざその為にいらしているわけです。ですから今さらどんなとき漢方(薬とハリ)がいいかなどとここで述べるのは、釈迦に説法のようですが、一応、考えてみましょう。

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なかなか一口でいうのは難しいのですが、病気とか病人とかいわれる範囲を二つの円の重なりで示してみると、A(漢方薬フィールド)の範囲は漢方治療を望まれた方がよいと思われる範囲、B(現代薬フィールド)は、漢方治療は少し無理で、専ら現代医学的手法に頼った方がいいと思われる範囲。
C(ミックスフィールド)の範囲は、AとBが重なっています。これは、漢方的手法と現代医学的手法を同時に使用したらよいのではないかと思われる範囲、のように区分けしてみましょうか。

まず、食欲不振から下痢や便秘に至る、口からお尻までの消化管及びそれに接続する膵臓や胆のう・肝臓、一口で言って消化器系のほとんどの病気は、普段、Aフィールドで生活されるのがよいでしょう。たまには、検査もかねてCへ出かけましょうか。もちろん、緊急手術が必要な大出血や癌などのときには、当分Bフィールドということもあります。

その次、動脈硬化や高血圧など心臓血管系いわゆる循環器科といわれるものはどうでしょうか?これも脳卒中や心筋梗塞の時の緊急の処置は、さすがにBでなくてはならないでしょうが、その他はほとんどAフィールドで生活されたらいいでしょう。ただし、循環器科の場合はCフィールドで生活されたほうが望ましい方が、消化器科よりは多いかもしれません。

血液が腎臓というフィルターを通るあいだに、必要なものと不必要なものとに分けられ、不要なものが尿です。尿は腎から尿管を経て、膀胱に貯まり、その後尿道を通って排出されます。この道筋を一口に尿路といいます。
男性の前立腺は尿道を囲むようにありますから、それらを含めて、この尿路全般の病気を扱うのが、泌尿器科。昔は泌尿器科というと淋病などの性病が多かったのですが、それらはもちろん、以前は全部漢方薬で対処しておりました。抗生剤を使える現在では、性病一般はBフィールド専門といってよいでしょう。

慢性化したもの、例えば、膀胱炎を年に4回以上も繰り返すような方は、Aフィールドで、それこそ 体質改善されるのがよいでしょう。加齢や冷えに伴う頻尿や、前立腺肥大のつらい排尿障害も、Aがよく効きます。尿路結石の相談もよく受けますが、これはCがよいでしょう。

最近は中年の女性の、くしゃみなどに伴い「おしっこがもれてしまう」という症状の相談がふえ、大学病院に専門の外来ができた所もありますが、まずAを試されてはいかがでしょうか。
その次に、アレルギー外来はどうでしょうか。お子さんが多いのですが、最近は成人にもひろがっています。喘息・鼻炎などの呼吸器系アレルギーとアトピー皮膚炎と称する皮膚のアレルギーが中心です。

この領域は、Bにあまり有効な手立てがないので、Aの株が相対的に上がっているといった感じもあります。喘息の重積発作などの場合は、Bに入院する必要がありますが、ほかは全てAでがんばるべきだと思います。
特に、Bで副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)を多用されてた方はAフィールドに来て、これを切るとき、リバウンド現象で大変辛い思いをされることが多いのですが、それを乗り切りさえすれば、軽快されていく方が多いのです。現代医療の中で、Aが最も期待され、かつAが活躍しうる場がアレルギー科だといっても過言ではないかもしれません。

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