体調の要は腸と腸内細菌
人の嗜好やカラダに良いもの=腸内フローラの好みとは限らない。平均4~5日で入れ替わる腸内細菌の元気印は、難消化性オリゴ糖 !まだ間に合う!?毎日の食が、作り上げる腸内細菌叢(腸内フローラ)。自己管理の賜です。
安全で便利な安定した生活ができるようになった現代人。手軽に食べられるファストフードをテイクアウトして簡単ディナー。TVやビデオを見ながら、くせになる炭酸飲料にポテトチップスやポップコーンは、欠かせないセットでした。なじむのに時間はかかりません。
腸の状態が、体調に与える影響として、
- 抗生物質に対しての耐性菌が多く、いざというときに薬が効きにくい。
- インフルエンザや風邪にかかりやすくなり、鼻炎やアレルギーがでやすい。
- 加齢による消化不良のような機能の衰え。
- 便秘や下痢。
- 肥満
マイクロバイオータ(Microbiota):腸内フローラを快適な状態に保つ対策として、「プロバイオティクス(乳酸菌など)」「プレバイティクス(食物繊維・オリゴ糖)」の摂取が、勧められています。
米国 Stanford University School of Medicine (スタンフォード大学医学部)や英国 King’s College London (キングス・カレッジ・ロンドン)遺伝疫学科、他大学などの科学者達による国際共同グループは、タンザニアのリフトヴァレーに住む狩猟採集民族の小集団である Hadza (ハッザ)族の腸内微生物を調査し、「伝統的な昔ながらの生活を送っている人々の腸内微生物の多様性は、季節によって周期的に変化する食事と、深い関わりがあることがわかった」と発表しました。
(Stanford University School of Medicin News 24 August 2017)
腸管微生物は、私たちが食べている食物に大きく影響されているのか?いないのか?
研究は、世界で数少ない伝統的な狩猟採集民族である Hadza (ハッザ)族のマイクロバイオータ (Microbiota):腸内フローラの季節変動を、米国 Stanford University School of Medicine (スタンフォード大学医学部)の研究グループ主導によって、調べた最初のものである。
調査は、Hadza (ハッザ)族のマイクロバイオータ (Microbiota):腸内フローラは、先進諸国の都市部に住んでいる人達と大きく違い、多様性があるということを裏付けた。
Hadza (ハッザ)族の腸内の生態系が、季節的な要因によって変化する食事の内容と完全に一致していることで証明された。
Hadza (ハッザ)族のマイクロバイオータ (Microbiota):腸内フローラは、季節的な要因によって変化する。その変化は、季節によって変わる食物摂取量と一致する。
研究結果は、1万年以上に及ぶ、人類の食生活の劇的な変化が、典型的な現代人の腸の微生物の多様性喪失において、重要な要素でありえると示唆している。「狩猟採集民族の存在は、現代的な工業社会に暮らす我々が、ずっと以前の人類祖先のやり方を学ぶためのタイムマシンのようなものである」と、Stanford University School of Medicine (スタンフォード大学医学部)微生物学と免疫学の准教授 Justin Sonnenburg 博士は述べている。
1万5千年以上の間、人は、腸の最下部に存在する何千もの微生物の種は、共進化(違う2つの個体群がお互いに関係しあってともに変化する現象)してきた。私たちが自身では行えない食べ物の消化を助け、食物繊維のビタミン合成に係わり、健康促進分子は、免疫システムを強化して、腸内の細胞の成熟を促進し、病原菌を含む競合する微生物種の侵入から腸内フローラを守っている。
約1万年~1万5千年前に出現した農耕は、根本的に私たちの食生活を変えた。過去、たった1世紀の間に、人々の生活様式は、さらに大きな変化がもたらされている。
デスクワークのような消費労力の少ない仕事。抗生物質の導入。帝王切開による出産。食物繊維が豊富な全粒穀物、果物、野菜は、ますます加工され、繊維が含まれない食べ物に徐々に変わっていっている。
腸内フローラは、数時間内でも著しく変わる。
これらの環境の変化は、共生生物に居心地の良い場所を提供するという私たちの腸内の能力が、微生物のさらされている状況に変化をもたらした。
しかし、現代の人の失ってしまった微生物の多様性に、科学と社会の発達が貢献出来ると考えるのは難しいようだ。
1,000人あまりの Hadza (ハッザ)族でも、主に5種類(肉・ベリー類・果実のバオバブ・塊茎・蜂蜜)からなる食事を取り入れて、昔ながらの狩猟採集民族の生活スタイルを厳格に守っているのは、200人に満たない。
西洋式食事は年間を通してほとんど同じだが、Hadza (ハッザ)族の生活には、冷蔵庫もスーパーマーケットもない。
人々の食生活は、リフトヴァレーの二つの季節によって移り変わる。乾期は、肉・バオバブ・塊茎の消費が比較的大きな部分を占める。雨期は、主に、ベリー類・塊茎・蜂蜜・バオバブである。(塊茎とバオバブは年間を通して摂取できる)「この生活スタイルを維持しているHadza(ハッザ)族の多くは、10年~20年の間に消失してしまうかもしれない。何人かは、いまもう、携帯電話を使用しているのだから」と、Justin Sonnenburg 博士は、見ている。
「我々は、自分たちの失いつつあるマイクロバイオータ (Microbiota):腸内フローラを研究するために、急速に閉じようとしている窓をうまく利用したかったのだ」と付け加えている。研究者達は、季節が一巡するよりも少し多くの時間をかけて約1年間にわたり、188人の Hadza (ハッザ)族から、350のサンプル便を採取した。サンプル便の微生物構成の徹底的な分析は、Hadza (ハッザ)族の食事摂取量と一致し、マイクロバイオータ (Microbiota):腸内フローラは、季節的要因で変化することを明らかにした。
特に、微生物の一部の種類は、蜂蜜がカロリー摂取量のかなりの部分を占める、雨季に減少し、食物繊維の豊富な塊茎の摂取量が、ピークを迎える乾期に回復した。
「我々の、マイクロバイオータ (Microbiota):腸内フローラは、日ごとに 若しくは、数時間内でも著しく変わることができる。それは、私たちの食べ物、食生活にかかっている」と、Justin Sonnenburg 博士は言及している。
違う年の同じ季節のサンプル便は、基本的に同一の微生物集団を含んでいた。一時的な食の乱れに対する回復力を示している。
もっと驚くべきことは、雨季には、微量の検出可能なレベルまで減少していた微生物種の数は、次の乾期に、同じ微生物種として出現し、確実に回復する結果となる。
先進工業国に住んでいる人の大部分の腸に圧倒的に欠けている微生物種でもあり、現代のアフリカや南アフリカと同じくらい多様な地域の狩猟採集民族にも共通にいえる。季節周期的な調査は、共著者達の二つの研究論文による先行研究結果と併せて、消失微生物の原因に関して、あり得るヒントを提供している。(訳:tori3tori3)
(Stanford University School of Medicin News 24 August 2017)
2016年の研究で、Stanford University School of Medicine (スタンフォード大学医学部)微生物学と免疫学の准教授 Justin Sonnenburg 博士と上級科学研究員である Erica Sonnenburg 博士は、「食物繊維をマウスに与えないでいると、腸の微生物種の多様性は、激減していくのがわかった。この多様性は、食物繊維の制約が、解除されると回復した」
(Stanford University School of Medicin News 13 Janualy 2016)
「もし、食物繊維の欠乏が4世代にわたって続くと、当初は、確かに回復していた微生物種は、完全に消失してしまう」と発表している。(訳:tori3tori3)
腸は、「第二の脳」
我々にも、起きているのか、既に起きてしまったことなのか?
「微生物が生息している私たちの消化管の最後の最後で食物繊維は、消化をうまく遂げる」
「Hadza (ハッザ)族は、平均して、1日に100gからそれ以上の食物繊維を摂取している。私たちは、1日に平均15gだけどね」と、Justin Sonnenburg 博士は言っている。
腸に集中している、ホルモン系・免疫系・神経系を正常な状態で保つためには、腸内細菌(私たちのカラダに必要な食物消化・ビタミンの合成・免疫作用などと、大きな係わりがある)のバランス=腸内フローラの安定した状態での維持が欠かせません。
日本人の成人の場合、食物繊維の摂取基準(g/日)は、成人の男性で約20g以上、女性で約18g以上とされています。Hadza (ハッザ)族の人達の、1/5ほどの摂取です。
偏った食事は元より、ストレスも運動不足も健康をそこなう大きな原因であり要素です。腸は、私たちの意思でのコントロールできませんが、確実に自分の考えを持っているから「第二の脳」と言われる訳ですね。
食物繊維の摂取基準(g/日)
日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要