臭覚は、加齢とともに衰えていく機能の1つと言われています。自分の臭いは、他人から指摘されるまで、わかりにくい場合もあり、中高年以降は、加齢臭も気になります。
米国 University of Chicago Medicine (シカゴ大学医療センター)外科の准教授 Jayant Pinto 博士(アレルギー性鼻炎・嗅覚機能障害・慢性副鼻腔炎など鼻疾患の専門医であり、耳鼻咽喉の老化現象への新しい臨床試験を行っている)は、「高齢者の嗅覚機能障害は、今後、認知症になりえることを予測している」と発表。
(University of Chicago Medicine Science Life 29 September 2017)
高齢化と嗅覚障害
研究は、National Social Life, Health, and Aging Project:NSHAP (全国社会生活、健康と高齢化プロジェクト)の1回目の調査(2005年7月~2006年3月までに、1920年~1947年の間に生まれた57才から85才の米国成人3005名を対象)と2回目の調査(2010年8月~2011年5月実施)の大規模な調査を元にした。
研究は、「Sniffin' Sticks (ペン型の容器に入っているフェルト芯に臭いをつけたモノ)」を用いた。
結果は、下記の通りであった。
被験者は、ペパーミント・魚・オレンジ・バラ・皮の5種類のそれぞれの臭いを嗅ぎ、一つずつ4つの選択肢から臭いを確定した。
- 78.1%の人は、正常な嗅覚を持っていた。(48.7%は、5種類の全てを正確に、29.4%は、4種類を識別)
- 18.7%の人は、嗅覚障害と見受けられた。(5種類中、3種類もしくは2種類を識別)
- 3.2%の人は、無嗅覚症に分類された。(2.2%は、1種類だけを識別。1%は、全て識別できなかった)
嗅ぎ分けテストが示す嗅覚の衰えと認知症のリスク
初期の検査から5年後、嗅覚喪失度数と認知症の発症率との間には、正の相関関係があることが分かった。 少なくとも一般的な臭い5つの内、4つの臭いが、識別出来ない人は、普通に臭いがわかる人に比べて、5年以内に認知症になる率が2倍以上だった。
「嗅覚は、脳機能や健康と密接な繋がりがあることを示している」
「我々は、嗅覚の機能の衰えは、認知症にかかる危険性がより高い人に注意を払うための、重要な初期の兆候であると考えている」
「この簡単な嗅覚テストは、既に、高い危険率をはらんでいる人を認識するために、手早く安価に行うことができる」
「嗅覚を失うことは、健康をそこなっている強いサインであるのだから」と、 Jayant Pinto 博士は述べている。嗅覚神経は、唯一、環境に直接さらされている脳神経である。臭いを感知する細胞は、脳の基底部の嗅球に直接繋がっており、潜在的に、汚染や病原菌のような環境危険要因に中枢神経系をさらしている。嗅覚欠損は、しばしば、パーキンソン病やアルツハイマー病の初期の兆しであり、疾患の進行につれて悪化する。
「嗅覚は、食べ物の栄養や精神的な健康面にも影響を与えている」
「臭いがわからない人は、食べ物が傷んでいるかどうかや、火事の時の煙に気づいたり、運動後にシャワーを浴びる必要があるかどうかなど、日々問題に直面する」
「臭いがわからなくなるということは、人生に多くの喜び得られないような鬱病とも密接な係わりがある」とも述べている。(訳:tori3tori3)
(University of Chicago Medicine Science Life 29 September 2017)
高齢者の嗅覚障害は5年以内の死亡の予測因子となり得る
2014年10月1日の論文で、Jayant Pinto 博士は、
「高齢者にとって、臭いがわからなくなることは、5年以内の死亡を予測する強力な要因である」
「嗅覚を失うことは、炭鉱の中のカナリア(危険の前兆)のようなものだと思っている」
「直接、死をもたらすのではないが、前触れであり、なにかひどく悪くなっている早期の警告である」と、発表している。研究は、今回と同様に、National Social Life, Health, and Aging Project:NSHAP (全国社会生活、健康と高齢化プロジェクト)の1回目の調査(2005年7月~2006年3月までに、1920年~1947年の間に生まれた57才から85才の米国成人3005名を対象)と2回目の調査(2010年8月~2011年5月実施)の大規模な最初に行われた在宅調査の一部である。(訳:tori3tori3)
(University of Chicago Medicine Science Life 1 October 2014)
五感を満たしてくれる和食に、香りは欠かせません。もし、お料理から臭いが消えたら、食欲が衰えたり、逆に満足感も得られず、どんどん食べ続けてしまうかもしれません。
食べる楽しみは、いつまでも大切にしたい日々の習慣。鼻を鍛えて、日本人のカラダに合った美味しい食習慣を維持し続けたいモノです。