最近よく一緒に遊んでいる年下の友人の馨さんは、一昨年前の春からカウンセリングに通っています。知人の紹介でステキな女性のカウンセラーに出会えたことが、2週間に1度の彼女のカウンセリングタイムを有意義なものにしているようです。おととしまでの彼女は、本当に忙しい人でした。
アパレルのプレスというお仕事柄、毎日何人もの人と会い、週に1度、仕事の始まる前8時から1時間フランス語を習い、ランチミーティングも週に幾度か、アフター5も関連企業の方々の接待や異業種交流会、友人や彼とのお付き合い等々で、眠っている4~5時間を除いてスケジュールはギッシリだったのです。お誘いの電話をかけると、システム手帳をバサバサとめくる音がして、「ごめんなさい。○日のお茶の時間30分くらいでもいい?」という答えが返ってきたものです。
たったの30分でもお会いしたい相手だったので、こちらに異存はありませんでしたが、今思えば、何人もの人たちがそうやって分刻みで彼女のスケジュールを塗り潰していたのだと思います。気がつくと、彼女の体には発疹ができていました。最初は首筋に3つ。3日後には腰の回り全体に、1週間後には背中全部をうめつくすように広がっていたそうです。
そして出会ったのがくだんの女性カウンセラー。彼女は馨さんを一目見るなり「ひとりになってごらんなさい」と言いました。ひとりになる?その意味がわからなくて、黙っている馨さんを見て、彼女は言いました。「あなたは、1日のうちでひとりの時間を何時間持っていますか?」そう聞かれて、家に帰ってから寝るまでと、起きて出掛けるまでの時間しか思い浮かばない馨さんに、彼女は続けました。「1週間でいうと、どれくらいかしら?何時間くらいが自分の、自分だけの時間?」ウィークデーの忙しさはもちろんのこと、そこで消化できない分は週末をも侵略し、たまに暇な時間があれば、すぐに予定を入れる。
その頃の馨さんは、実にひとりの時間が1日平均1時間強。1週間にして8時間にも及ばないことが判明しました。相当重症です。この数字、ピンとこない方も多いかもしれません。ご自身もちょっと計算してみてください。家庭を持っていらっしゃる方なら、もっと少ない時間かもしれませんが、普通、どんなに少ない人でも馨さんの倍はあるのではないでしょうか。
「ひとりになってみなさい」と言われた馨さんは、それから毎日、ひとりの時間を計るようになります。分刻みというあたりが、彼女らしいところですが、時間を計って、その間何をしていたかを克明に記録するようになりました。そうして気づいた幾つかのことに、「ひとりになるのが怖かった」という事実がありました。「ひとりになる=誰からも必要とされていない」という方程式が、彼女の心の深い所にあったことを初めて知ったと振り返ります。
そして、そんな方程式は存在しないのだという事実もすぐに理解しました。自分に要求される全てをこなしたいと切望していた彼女が、本当にやりたいことだけ、本当に会いたい人だけに絞り込んだのです。足し算は永久に続きます。でも引き算はマイナスを考えなければ、ゼロまでたどり着いたところで終わります。馨さんは、引き算ができるようになったのです。いつの間にか体中に広がった発疹は消え、会社も辞めました。当時の彼とは今でも仲良しだけど、自分ひとりの時間は2倍くらいに広がったと言います。
あなたにはひとりの時間がどれだけありますか?そして、その時間は何をして過ごしていますか?
考えてみれば、誰にも邪魔されないひとりだけの時間ほどステキな時はないのではないでしょうか。その幸せを知れば、何人かで共有する時間も、もっと楽しくなる。もっと有意義になる。私はそう思うのです。
シンプルスタイル Index
- 迷ったら、そのままそこに立ち止まる。
- 仕事のスイッチを完全オフに。
- ひとりぼっちは、最高の贅沢。
- 自分を愛することを知る。
- 夜寝る前に、深呼吸。
- あなたは本当に自分に不満ですか?
- 三ヶ月に1度、モノを整理する。
- ちょうどいい距離感がイイ友達。
- 月に2度はアナログに戻る。
- 必要以上に人に気を遣わない。
- 自分の仕事の半分を人に委ねる。
- とにかく眠る。
- あなたが買おうとしているモノ。それは、本当に必要なものですか?
- 魅惑のバーゲン。今シーズンだけ行かない勇気を持つ。
- 曜日ごとにスケジュールを決めてみる。
- キレイな家が住み心地がいいとは限らない
- 忘れてしまったことは、忘れていいこと。
- 素顔で外出できる自分を取り戻そう。
- お味噌汁のお出汁をちゃんと取って、ジムに通う。
- 100%の完成度がすべてのことに必要?