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ストレスと栄養対策

現代はストレス時代といわれるように、私たちの回りにはストレス要因が実に多くさんあふれています。最近問題になっているゴミ焼却場から出るダイオキシン、自動車の排気ガス、OPPなどの食品添加物等の科学的なもの、大腸菌O-157やエイズウイルスなどの病原微生物、スギ花粉やハチ毒などのアレルゲンによる生物学的なもの、地震や台風などの自然災害、異常気象による高温・低温、騒音や振動などの公害による、物理的なものなど数えあげたらとてもきりがありません。これらの環境的ストレス要因のほか、私たちに直接かかわってくる精神的ストレス要因もあります。

このような肉体的あるいは精神的な刺激が私たちのからだに加わってきたとき、その刺激によって受けるダメージを少しでも和らげようとする一連の生体反応が現れます。これをストレス反応といいます。このストレス反応をたびたびくり返すうちに、刺激に対応する姿勢が強化されるようになり、その結果として体質の向上がみられるようになります。しかし、ストレス反応の弱い人では、ダメージを受けてそのまま参ってしまう場合もあります。サラリーマンがよく肩こり、目の疲れ、不眠、食欲不振といったいわゆる現代病の諸症状にかかるのもその一つです。一連の生理作用の結果、体内の新陳代謝が高まり、ストレス態勢強化へと進行しますが、それを支援するための飲食物の摂取については十分な注意が必要です。ストレスを受けたとき、あるいはその予防のための栄養対策はどのようにすればよいでしょうか。

食欲がない時は牛乳を

ストレス状態になると、一般的に新陳代謝が盛んになるので、エネルギー需要が増加します。ところが、強いストレス状態では、食欲が著しく減退し、食物をあまりとらなくなります。ふつう空腹になると、胃は飢餓収縮といって、一定時間間隔で収縮運動をくり返します。そうすると空腹感を覚え、摂取中枢が食物の摂取を促します。しかし、強いストレス反応の場合、交感神経のはたらきで飢餓収縮が起こらなくなり、食欲がわかないので、食物をとらなくなります。その結果、胃の中はますます空っぽとなり粘膜がムキ出しとなります。

胃液は、精神的に緊張しているときは、交感神経のはたらきでその分泌が抑え られていますが、胃の中の食物がなくても、迷走神経の刺激によっても分泌します。したがって、空腹時にストレス状態になりますと、胃液中の塩酸によって、胃の粘膜がおかされることになります。そうゆうときには、牛乳のようなタンパク質と脂肪の多い食品をとって、胃の粘膜を保護するのがよいです。牛乳200mlは1時間分のエネルギー源にもなります。ストレス状態では、エネルギー補給量が減少しがちとなりやすいので、ふだんから身体にある程度の熱量素(グリコゲンや脂肪)のたくわえを持っている人がストレスに強いことになります。

ストレスとタンパク質

きびしい環境、例えば極寒中の不眠状態が続くと、尿中の窒素排泄物(尿素など)の量が増加することがわかっています。これはストレス反応によって、副腎皮質ホルモンの分泌量が増加し、その影響として筋肉中のタンパク質が分解してアミノ酸となって血中に流れ出し、さらに肝臓で分解されて熱と尿素をつくり出すからです。その結果、食物としてとったタンパク質中の窒素と尿および糞中の排泄物中の窒素とのバランスがくずれ、身体に悪影響を及ぼす結果となります。したがって、ふだんから良質のンパク質を十分にとり、筋肉をよく鍛えてタンパク質量を豊富にしている人がストレスに強くなります。

また、ストレス中は良質のタンパク質を十分とることが回復を早める結果ともなります。最近、病原菌に対する感染・免疫の機構が明らかになるにつれて、栄養失調とくにタンパク質欠乏との関係がよくわかってきました。このようなストレスに十分な抵抗力を得るためには、血液中の抗体、補体をはじめとして多量のタンパク質が使われます。したがって、血液中のタンパク質量を正常に保つようふだんから心がけるようにしましょう。

ストレスとビタミン

ストレス状態では、新陳代謝が高まるので、B1、B2、ナイアシン等のビタミン類も要求が高まります。とくにストレスと関係が深いのはビタミンCです。人体にはふつう約1.5gのビタミンCが存在しています。とくに副腎には100gあたり30~50mgと最も多く含まれています。そしてストレス状態になると、副腎のC濃度が低下します。
ストレスの回復や予防にビタミンCを含む食品を多めにとることが大へん有効です。日本人のビタミンC所要量は、成人で1日50mgとされています。アメリカでは、がんやストレスの予防と称して、1日に1gもとる人たちがいますが、過剰な分は尿中に排泄されますので、実害はありません。

(1998年9月)

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