30.虞摶(ぐたん)—最古の器具使用浣腸

虞摶
虞摶(ぐたん)  141?~203?

「医学正伝」は日本でも広く読まれる

虞摶、字(あざな)は天民、明の浙江義烏の人。代々花渓に住み、花渓恒徳老人と号した。明の正統3年(1438)に生まれ、正徳12年(1517)卒。享年79歳。

医者の家柄で、曾祖父の虞誠斎が朱丹渓と同じころの生まれで同郷であったため、その影響を受けて、医術で名を高めました。その後代々世襲し、いずれも丹渓の学問を宗と仰ぎました。虞摶は幼少より聡明で、はじめ経書を学び、母が病気になってから医術を志して十年で群書を読み、祖父や父からも直接学んで医理に精通したといいます。

虞摶も朱丹渓の学説に私淑し、特に丹渓の「陽常に余あり、陰常に足らず」という論点を「陽中に陰あり、陰中に陽あり」と発展させて、気血関係を明らかにし、気が血を生じさせる意味と考え、李(り)東垣(とうえん)と丹渓の学説をうまく融合させました。例えば、李東垣の補中益気湯にも色々な生薬を加えて、治療の対象を広げています。

彼は従来の方法にとらわれず、新しい医論を唱え、新しい医術を開発しました。
腎は漢方医学では「先天の元気の宿るところ」とされますが、古代にも解剖が行なわれていましたから、二つある腎臓はいつも問題になっていました。「難経」の「左を腎と為し、右を命門と為す」という見解に、彼は大胆に異議を唱え、両腎は「其の形同じく、色も亦た異なるなし」、二つに分ける根拠はない、と考え、「両腎を総じて命門と号す」という説を出しました。

またある患者が、大便が25日もなく、肛門も大腸もすごく痛み、いろいろな方法で治療してみたが効果がありませんでした。そこで虞摶はある方法を考え出しました。小さな竹筒を肛門に挿しこみ、入り口から香油を吹き入れる。すると半時ばかりで、病人はその油が腸内に入り、ミミズが這うように上にのぼってくるのを感じ、しばらくすると黒い糞が1~2升も出ました。これが中国医学史上、器具を使って浣腸した、記録に残る最も古い例です。

晩年、78歳になって著わしたという総合医学書の「医学正伝」は、16世紀末には日本で出版され、江戸時代の日本漢方後世派のよりどころとして、広く日本でも読まれました。

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