元気のいい「アシタバ」
今日摘んでも明日にはまた若い葉がでているくらい元気よく発育するから「明日葉」です。
いきなり余談で恐縮ですが、よく似た命名の植物に「アスナロ」がありますね。これは漢字では「翌檜」と書きます。檜と同族のヒノキ科の喬木で、材木として優秀なのですが、精油成分の香りが強くて好まれず、長いこと水中に貯木されます。そこで明日には檜のようになりたいものだ、アスナロ「翌檜」というわけです。
さて香りのよいセリ科にはニンジンなどの野菜の他、漢方生薬のトウキ、サイコなど馴染み深い植物がたくさんありますが、このアシタバもセリ科の多年草。もともと八丈島で野菜として利用されて拡がったもので、八丈草ともいい、関東、東海などの暖地に自生しています。南伊豆の山道の崖などでよく見かけます。シシウド(独活)と姿も香りもよく似ています。
鹹草という名前はあまり聞きません。「鹹」とは漢方医学ではよく出てくる、生薬の味を現わす言葉で、塩辛いという意味ですが、ほんとに塩分を含んだ植物はないので、鹹草もアシタバの苦みや香りを現わした命名でしょう。
茎や葉をちぎると、黄色い汁がでますが、その精油成分には利尿、緩下、毛細血管強化作用などが報告されており、乳牛の牧草にすると乳の出がよくなることから催乳作用、強壮作用があるともいわれます。
昔は痘瘡の治療に用いられたそうです。日常私たちが用いるには、春から初夏に葉をちぎり、軽く水洗いしてから二~三日間日干しをして、それからゆっくり陰干しします。カリカリに乾いたら出来上がり。
お湯を注いで、健康茶として、また煎じて服用してもよいですがこの場合は飲み過ぎはいけません。
春先の若葉は茹でてお浸しに、和え物に、ちょっと苦みのきいた春の便りです。