98.ドクダミ(十薬・重薬)—解毒剤として—

採取してきたドクダミをよく洗って乾燥しておけばドクダミ茶。

「ドクダミや真昼の闇に白十字」という俳句があるそうです。初夏から梅雨時のちょっと暗い湿った路地などによく見かけるお馴染みの民間薬です。
十文字形の白い花が印象的で「ドクダミというイメージのよくない名称は、あの清楚な花にはいかにも気の毒」と言った友人を思い出します。

植物学的にいうと、あの白い部分は花びらではなく苞片というもので、中央に盛り上がっている花穂の、淡黄色の小さなひとつひとつが花で、花びらは無いそうです。今回、なにを書こうかと『牧野和漢薬草大図鑑』をみていたら、1300種くらい紹介している薬草の冒頭、第1番がドクダミでした。おそらく双子葉・離弁花のなかでも植物学的には古いタイプの植物なのでしょう。コショウ目ドクダミ科とあります。コショウ目コショウ科は、もちろん食卓の胡椒・ペッパーです。香りのきつい同じ仲間でも、胡椒が芳香なのに対して、ドクダミの中国名は魚腥草。魚の腐ったような腥(なまぐさ)い臭いの草という意味でほんとに気の毒。
日本名のドクダミも、この強烈な臭いからの連想で、毒を貯めているようだから「毒溜み」。毒を矯正する解毒作用があるから「毒矯み」とも。

花の時期に根や花もふくむ全草を収穫し、炙ったり揉んだりして、皮膚の湿疹やおでき・水虫などに外用薬として、痔の座浴剤として用いる。蓄膿症には汁を滲ませた葉を鼻に挿入する等。乾燥すると、薬効成分であり、強烈な臭い成分であるアルデヒド類が酸化して臭いが消えてしまうが、梅毒などの解毒剤として五物解毒湯などに配合されました。ドクダミ茶は、家庭でも採取してきたドクダミをよく洗って乾燥しておけば気軽にできる。ほのかに苦みのあるさっぱり感が私は好きです。お正月、ご馳走つづきのあとの胃腸には最適かも。