糖尿病の民間薬
山菜の王者「タラの芽」のタラの木。ウコギ科。畑の周辺の山林にはいってゆくと、日当たりのよい斜面にときどき見つけることができます。比較的孤立してぽつんという感じで直立していること、背が高いわりには枝が少ないこと、葉が大きいこと、なにより幹にトゲトゲがあるのでわかります。早春にはその若芽を食用にするのはご存知のとおり。
中国の古書にも「江南の山谷に生ず。高さ一丈ばかり、直上し枝なし、茎上刺あり、山人、頭を折て食らう。 "鳥不踏"という、刺多く、枝なき故なり」とあります。枝もないしトゲトゲで鳥が止まれないということです。日本では江戸時代の本草書にツノオトシという別名が紹介されてます。タラの木が葉をだすころが、ちょうど鹿が角を落とす時期だから、葉を食べると角が落ちるようだからと。
最近はスーパーでも養殖ものが、出回りますが、値がはるわりには香りがものたりない。ここ数年、畑の斜面にタラの木を少しずつ集め、挿木でふやそうとしています。そのうちアニマルファームの春の名物になりそうです。
もうひとつ春のハイキングでみつけることができるのは、同じウコギ科のウド。このシリーズの独活の項で紹介してありますが、ウドの大木のウドです。先日、畑の斜面で高橋さんが見つけ、さっそく、茎と葉、若芽を天ぷらにしましたが、やわらかく、香りはタラの芽より濃厚。ほろ苦さはタラの芽よりも上品で旨いものです。このウドの根は和独活とか和羌活といわれ、民間でリウマチなど関節のはれ痛みに使われてきました。ウドにはセリ科の独活もあって、セリ科とウコギ科は近縁でよく似ているので混用されていましたが、最近では漢方薬としてはセリ科の独活が輸入され、使われています。
ウコギは漢方薬、薬用酒として有名な五加皮(ゴカヒ)、中国語の音でウージャーピーの音訳です。五加皮の根皮は一般に下半身の衰えやリウマチなど関節の腫れ痛みに効きますが、薬用酒が有名なのは、おなじウコギ科の朝鮮人参が意識されてのことでしょう。
さて漢方薬としてのタラの木は、タラ木皮、タラ根皮と呼ばれ、中国での朷木白皮、朷木根皮などに相当します。日本ではタラ根湯が糖尿病に効果あるといわれ、民間薬として使われてきました。朷木皮は先述のほかのウコギ科の生薬同様、リウマチなどの関節痛につかわれますが、若返り、強壮作用や精神の安定をはかる安神作用なども知られています。