「シジミ売り黄色な顔に高く売り」
蜆という字を辞書で見てみると、虫偏に見えるという漢字。蜆は、浅瀬の砂地からちょっと姿を現し(見わし)た小さな虫のようにみえるから、蜆とあります。「人を恐れて小さくなっている様」という使い方もあるそうですから、日本語のシジミは「縮み」と関係ありそうですね。
因みに現代中国語ではシェル石油のことを、「蜆殻油」と表記します。音訳と意味訳を兼ねた漢字化です。ご存知のように、淡水または汽水の河口や湖などに生息するシジミ科の二枚貝の総称がシジミで、広くアジア全体、オーストラリアなどに多く分布します。新大陸アメリカでも大量に発生して河をせき止めてしまい、問題になったこともあるようです。
日本では五種類あって、宍道湖のシジミとか、琵琶湖の瀬田のシジミとか有名でしたが、最近ではほとんど輸入にたよっているようです。「汽水」とは淡水と海水が混ざった、薄い塩水のことですが、中国に旅行されると、町でよく「汽水」を売ってます。これはサイダー、炭酸水の意味で、まさか薄い塩水ではありませんから、念のため。
食品としては、殻ごと入れる味噌汁が一番。若い人にはあまり馴染みがないかもしれないが、是非ご家庭で出してあげて欲しい。シジミ特有の香りのあるスープを飲むだけでいいが、食糧難だった、わたしも子どもの頃は一つ一つ箸でつまんで身も食べていましたよ。むき身では、佃煮にしたり、ご飯に炊き込む深川飯が有名。台湾屋台料理の方が若い人には馴染みかも。
クスリとしては「シジミ売り黄色な顔に高く売り」という川柳があるように、昔から皮膚が黄色になる病気=黄疸の特効薬として知られています。肝臓がわるいと言われたり、酒を過ごした翌日、あわててシジミの味噌汁を奥さんに作ってもらう方も多いと思いますが、古医書には「時気を治し、胃を開き、丹石薬の毒を消し、目を明らかにし、小便を利し、湿毒を下し、酒毒・目黄を解する」とありますから、効きそうですね。
シジミをそのまま水に浸けた液を皮膚病に塗るとよい、という記載もあります。貝殻を細かく掲いて米に炊き込んで胃のクスリにする、という方法もあったようです。