セリ科の西洋野菜
セリ科の植物はその芳香で古くから東西を問わず、薬用に食用に用いられてきたものが多い。日本では「春の七草」の冒頭にある、清い水辺に繁殖する「芹」や三つ葉が馴染み深い。ニンジンも葉を見たり嗅いだりすれば同じ仲間とわかります。
漢方薬では強烈な香りの当帰や川苛がやはりセリ科。このシリーズ登場済みの「薗香・ウイキョウ」もセリ科です。なお水辺の香草といえばよく肉料理のツマになる「クレソン」を思い出しますが、こちらは「山葵・ワサビ」と同じアブラナ科。大根、芥子のピリッと同じ仲間です。
さて今回はお馴染みの西洋野菜、セリ科のパセリとセロリです。ともに地中海沿岸に原種があるとされています。エジプトなどでは紀元前から香料・保存剤として用いられたようで、死者の体にパセリの葉?をふりかける習慣があったそうです。
ギリシャでは競技の勝者の頭にちょうど月桂冠のようにパセリの葉を円く編んでかぶせた地方もあったとか。世界に広がってゆくのは意外に遅く15世紀以降で、セロリは秀吉の朝鮮出兵のとき加藤清正が持ち帰ったとされ、上記のように同じセリ科で似ているから「清正ニンジン」、また後には「オランダ三っ葉」と呼ばれました。
パセリは江戸時代の1700年ころの貝原益軒の著書『大和本草』の「芹」の付けたりに紅毛(オランダ)芹あり。根は羊の蹄に似たり。」とあるのが日本の初出だそうです。今でもパセリのことをオランダセリと言うことがあります。
私は、パセリは葉を食用に品種改良したもので「葉芹」からパセリだとずっと思っていたのですが、全然違いました。英語でparsleyで、parsはギリシャ語で岩のような、の意味。後半はセロリ(celery)で、葉がもりもりと岩のように見えるセロリということのようです。
栽培が易しく、放っておいても枯れずに増えるので一時はアニマルファームでもずいぶん繁殖していました。最近畑に遊びに来た方が「パセリの葉が増えすぎて野菜として食べてます」とたくさん持ってきてくださり皆でむしゃむしゃ食べました。美味しい。セロリの種子はスパイス、セロリシード。これを塩と混ぜたセロリソルトなどがあります。ともに比較的おそく中国に伝わったことと、何故か中国では好まれなかったようで、漢方処方には利用されていないようです。