127.桃(桃仁・桃葉・白桃花)—女性の血の道症に。便秘にも効果。—

よく繁殖するので、桃

桃

桃でまず思い浮かぶのは桃源郷。以前、福島の桃の栽培地をバイクでツーリングしたことがありますが、左右見渡すかぎり延々と桃の花がつづいており、単車で走っていて、もしかしたら抜け出せないのではと目が眩むようでした。

大分走って夢から覚めて振り返ると、盆地一面が桃の花で埋めつくされており、ため息の出るようなほんとの桃源郷でした。

中国原産で日本にも古くから伝わり、薬用として食用としても古くから栽培されていたようです。「日本書紀」には、イザナギノミコトが桃の実を投げつけて雷を退治したとありますから、たんに美味しい果物だけではなく、薬効のあることがわかっていたのでしょう。魔除け、厄除けのシンボルとして寺の紋に使われたりしています。

桃は、畑でも都会でも桜などに比べれば生命力が強く(ぜいたくな水密を作ろうとすれば別ですが)、よく繁殖し、花も実もおびただしくつけるから桃という。兆は億よりも上の単位でおびただしいという意味だと中国の古書にあります。日本ではモモを百々と書きますが、これも同じ意味あいです。

空気が通るので「木通」

便秘にも効果

さて桃太郎は、特に女性を若々しく瑞々しくする霊力のある桃を食べて若返った老夫婦から生まれた、という説もあるのですが、お話では生まれたのは桃の種から。普段食べおわって捨てる種をトンカチでたたいて割ると、きれいなナッツが数個出てきます。これが桃仁で実際の薬用には果肉が薄く種の大きな山モモを使いますが、アンズの種・杏仁と共に漢方ではとても重要かつポピュラーな生薬です。

桃の節句が女の子の祭りであるように、薬としても桃仁もどちらかといえば女性の血の道症に多く使われます。桃仁の入った漢方薬で妊娠しやすくなり、赤ちゃんのできた方はたくさん居ますが、多量に用いると堕胎薬にもなるので注意せねばなりません。また頑固な便秘にもよく効きます。

桃葉も昔から薬として使われ、熱した石の上に桃の葉を敷き、その上に足を乗せて皮膚に喰い込んだツツガムシを退治したという記録があります。現在では浴剤として、女性のお肌を美しく。
白桃花は花のツボミを煎じて使います。仁よりは作用がマイルドです。