肉厚の葉は天ぷらやおしたしにして
私の子供のころ、おできや火傷などちょっと皮膚を傷めると、すぐに母が庭の隅からユキノシタを摘んできて、もみもみしてシンナリした葉を貼ってくれたものです。包帯で止めたのでしょうが、また遊びにいって包帯なんかきっと外れてしまったのだろうな。それでよかった。イソジンで消毒してなにやら軟膏を塗って、などということのなかった時代。無骨な絆創膏はあったが、バンドエイドなど便利なものはなかった頃、しみじみ懐かしい。
ユキノシタ科といえば、このシリーズ紹介した「甘茶」がユキノシタ科のアジサイ属です。畑には、アジサイとウツギ(卯の花)の類が自生していますが、これは確かに、特に茎の感じがよく似ているから同属であることはわかりますが、ともにユキノシタ科と云われると素人には??です。 ユキノシタは、北海道以南の日本や中国の湿った日陰の土地や岩場に自生している半常緑多年草。匍匐枝で広がって腎臓形の葉が「雪の下」でも枯れずに地面を覆います。この匍匐枝や葉の裏側が赤っぽいのはアントシアン成分の色。花茎だけがすっと伸びて初夏に白色の五弁花をつけますが、この五弁のうち二弁だけが大きいので、花は「大の字」に見えます。
500年前の中国の本草書に石草類として「虎耳は陰湿の処に生ず。人また石山上に栽培す。葉の大きさ銭の如し。状は虎の耳に似る。夏に小花を開き淡紅色。」とあります。薬用部分は葉で、肉厚で毛に覆われていて虎の耳に似ているので中国名は虎耳草(こじそう)。 葉の絞り汁を耳に注いだり、脱脂綿に含ませて耳に詰めたりして、昔から慢性中耳炎や外耳炎に用いられたので、別名「ミミダレグサ」。
このように葉には抗菌作用があるので、湿疹や火傷に軽くもんで貼る。おできには火にかざしてシンナリさせてから貼ると排膿を促進する。痔には乾燥した葉の煎じ液で洗う、などなど。また小児のひきつけにこの葉を塩でもんで絞った汁を口に含ませたといいます。肉厚の葉は天ぷらやおしたしにして食べられます。