107.にんにく(大蒜)—「皮膚病、毒消し、風邪くすり、消化剤、虫下しなどに使う」—

古事記にも登場

ニンニク、玉ネギ、百合根、ラッキョウなどは一目瞭然同じ仲間ですよね。野草の野ビルだって同じ。長ネギやニラは食べる部分が地上部ですけれども、ネギの下の白い方、ややふくらんでいる部分は、ああここを太らせれば玉ネギと同じだと連想できます。チューリップの葉と球根を思い出してもよい。皆ユリ科の多年草です。

ニンニクは古くから食用にされていたようで、古事記のヤマトタケルが「食べ残しの蒜を白鹿の目に打ち当てて征伐した」という部分があります。食べ残したと書いてあるわけですから食用にしていたこと、又目にしみるような強烈な成分を有するスパイシーな、「強い気」を持った食べ物で霊力を備えている、と古代人が考えていたことが分かります。

ニンニクは中央アジア原産で、紀元前にはエジプトに伝わり、玉ネギとともに栽培されていたようで、あのピラミッドを造った労働者たちはニンニクでスタミナをつけていたと言われます。東方へはインド、中国(中国では西域の「胡」から伝わったのでニンニクのことを「胡」と書きました。「胡椒」とか「胡麻」などのスパイスも同じ胡地方から伝わったものです)を通じて日本へ伝わりました。古書に和名は「於保比留」とあります。「おおきなヒル」ですからニンニクのことでしょう。

「浴剤」としてもおすすめ

ニンニクの主成分はアリインといい、切ると強烈な臭いのアリシンに変化します。アリシンはビタミンB1と結合してアリチアミンとなり、腸からよく吸収されるので、アリナミンはこれを化学的に合成してつくったものです。
西洋のギシャ本草でも、中国の古医書でも「皮膚病、毒消し、風邪くすり、消化剤、虫下しなどに使う」とあります。東西とも古代では、強精作用はそんなに強調されず、食べ過ぎると害がある、と害の方を強調しているのが面白いところです。

意外と知られていないのが「浴剤」としてのニンニクで、一片を適量のお湯で煮て、その煮汁ごと湯ぶねに入れて下さい。肌はつやつや、よーく暖まり、ちっとも臭くありません。一回あたり一番安価な浴剤だと思います。冬には特におすすめします。
漢方的には「大蒜」といい駆虫剤として用いられますが、漢方薬の一般的な処方に入ることはありません。