こたつでミカンは日本のお正月
みかん類(柑橘類)は、世界でもっとも古くから知られ、栽培された果実のひとつです。中国の古書にも、柑、橘、柚、橙、などいろいろのみかん類が記されていますが、現在の日本で見うけるいろんなみかん類や漢方薬が、これらの漢字と対応しているとは限りません。
私が子供の頃、昭和20~30年代にかけての頃、みかんはりんごとともに庶民が普段口にすることのできる最も安く大衆的なフルーツでした。昨今のみかんはどれも大粒で、味はごく甘くておいしいのがあたりまえですが、当時のみかんは、まだまだ酸っぱいのが多くて、子供心に、甘そうなのを選って食べた記憶があります。
お正月前には、みかんを箱買いしたもので、食品のとぼしかった当時としてはとても豊かな感じがしました。甘そうなのは、大粒で皮(陳皮)がむきやすそうなもの。それをひとつかふたつお風呂に持ってゆき湯ぶねに浮かせておきます。出てからぬるくなったミカンをむくと、白皮がよくとれてむきやすく、ニンマリ。またお正月のお餅を食べた口ですぐミカンを食べると、独特の苦味が口に残ってこれもニンマリ。コタツ、お餅、ミカンは懐かしい正月の三点セットです。
日本原産の温州みかん
私たちが普段食べているのが温州みかん。江戸時代の初め頃、もともとは中国から伝わって九州で栽培されていたミカンの一種の中から、優秀な変異株を見つけ、日本で改良し栽培を広げたのが温州みかんです。江戸時代は紀伊国屋文左衛門で有名な紀州和歌山産が有名でしたが、明治以降世界中に伝わるとともに、国内でも静岡など東日本まで栽培が広がりました。温州とは中国のみかんの栽培の盛んな所の地名をとったものですが、あくまで日本原産と言ってよいものです。
漢方では陳皮(ちんぴ)といって、今はこのみかんの皮を使いますが、日本では古くからシラワコージ(白輪柑子)みかんを橘皮として使っていたようです。古く長く乾燥したものの方が良品なので陳(旧)皮と名付けられました。西洋的にいうと苦味健胃剤で、漢方的には、水をさばくことに薬効があるとされ消化剤と去痰剤に使われます。
香辛料としては七味唐辛子に入っていたり、冬至の柚湯など浴剤に。なお。温州みかんよりはやや原種に近い感じのみかんの仲間には、柚(その仲間には、徳島のスダチ、大分のカボスなど)、ダイダイ、カラタチ、きんかん、などあり、それぞれ食品、香辛料、漢方薬として使われています。