木と草の中間
筍(竹の子)の季節。薬草園のお隣の千代子さんの竹林で、筍掘りをさせて頂き、毎春おいしい経験をしています。冬の間に、この竹林の落葉を集めさせて頂き、薬草園の堆肥の大事な原料のひとつにもなっています。
竹の種類も多く、古来日本にも野生していたそうですが、筍で一番有名な孟宗竹は、江戸時代に、沖縄(琉球)地方に大陸から移したもので、それが薩摩藩経由で全国に拡がったそうです。南方系のものですから関東以北にはありません。
竹類は大きく竹と笹に分かれます。葉が堅く茶色にまきついたままになり、むけにくいのが笹だと聞いたことがあります。一般には「ささ」は小さいという意味で、竹の背の低いものの総称。
ささは酒のこともいうので、大名に「ささを飲むか」と勧められた八五郎が「いくら貧乏してても熊じゃねえからささ(笹)はくわねえー」とやる落語もあります。このように笹は全国に自生していて、特に熊のいそうな北方に多く、南方中心の竹と異なります。
竹や笹は木か草か。その中間ということになっています。分類は、被子植物の中の単子葉類イネ科ということになっていますが、一日に1メートル以上も伸びることもある竹はイネとは似ていない。竹の子が50~60日も伸びるともう一人前になり、それ以上は太くならない。
年輪もないし中空だし、竹を割ったような気性というように、縦にだけ割れて横には決してわれない。堅くなるのは茎に珪酸が多く含まれているから。一方、樹木の幹はリグリンが多く含まれている。形成層から細胞分裂して太くなってゆくので年輪ができる。そうゆうわけで、竹は草でもなく木でもない特殊な性質をもっているので「木に竹を接ぐ」(いっしょにしても馴染まない、不似合いだ)というコトバもあるのです。
さて漢方薬ですが、ハクチ(淡竹)やマダケ(真竹、苦竹ともいう)などが使われます。竹の葉っぱ竹葉(チクヨウ)は熱病後の衰弱した身体の余熱をとりながらさっぱりさせる作用。竹茹(チクジョ)というのは竹の皮をはいだあとの中間層をうすく削りとったものを使います。
基本的には竹葉と同じ作用です。竹瀝(チクレキ)は、竹の茎を縦に割って火であぶりジワーッと両端から出てくる液体を集めたもの。採集するのがとても大変ですから貴重品で、これを凝固したものを「天竺黄」といい、脳卒中やひきつけの聖薬とされていました。