120.ホオズキ(灯篭草・登呂根・酸漿・酸漿根)—いろいろな炎症を抑える—

子宮収縮作用もつよく、妊婦には用いない

江戸時代の前期には、浅草寺の縁日はすでに有名だったらしい。わけても七月のお盆の入りにあたる、現在では七月九日と十日の「四万六千日」の縁日は早くから香具師が仕切り、時々の流行物を売っていた。百年前、明治中期からはホオズキが名物になったようで、現在では「ホオズキ市」の方が通りがよい。

ホオズキのように小さい果実、果汁に富んでやや固めの果実は、液果と呼ばれますが、イチゴ、ブドウ、トマトなどの液果のうち、ホオズキと同類は?ご想像のとおりナス科のトマトです。特にミニトマトそっくり、といえば納得できますね。ホオズキの特徴はなんといっても果実を包んでいるあの紡錘状の衣。花のガクが発達したもので、はじめの緑色から成熟して美しい紅色になります。

その形から灯篭草という別名があります。お盆のとき飾ってご先祖が戻ってくる道を照らす提灯にします。中国ではいろんな異名がありますが、「紅娘子」などはいいですね。「姑娘花」(姑娘=お嬢さん)とも。日本名のホオズキも頬が紅く色づいた子供・娘からの連想のようです。

果実は酸っぱいから、中国では酸漿(酸っぱい・ジューシー)といいます。このままでは食べた人は少ないでしょうが、ちょっと加熱するとおいしいミニトマトと同じだそうです。子供の頃はよく遊びました。皮を破らないように、種子の詰まった果肉を揉んで柔らかくし、時には爪楊枝を使って、狭い口を破らないようにきれいに中身を出せれば大成功。短気で根気の続かない子供だった私は滅多に成功しなかったけれど。風船状になったホオズキは歯と唇で、ブーブー、キューキューと音を出して遊びましたね。懐かしいなー、今の子供たちはこのホオズキ笛を知っているでしょうか?

薬用部分は主として根。ナス科の植物は、すでに「茄子」で紹介したように、薬理活性が強い(毒にも薬にもなる)。例えばナス科のジャガイモの芽は毒だとか言いますね。先述の灯篭草から、その薬用部分は登呂根、中国では酸漿根。漢方的には清熱利湿といいますが、いろいろな炎症を抑えます。子宮収縮作用もつよく、妊婦は用いてはなりません。根が発達していて、いろいろに効く、霊力があるところから、鬼杖根とも呼ばれます。