119.ボウフウ(防風・浜防風)—「カゼ」を「防ぐ」特効薬だから「防風」—

風邪には防風

防風

浜防風は日本全国の海岸の砂地に何処にでも見られるセリ科の多年草。地上部は背が低くはいつくばっているようですが、根は長大で1メートルに達することもあります。5月ころに白い小花をつけるが、その前、早春の若芽や若茎は日本料理の高級食材として、おひたしや酢の物、刺身にツマにつかわれ、店頭に並ぶこともあるので「八百屋防風」ともいわれます。

薬用部分はこの長大な根で、その形から「浜牛蒡」とも呼ばれています。カットしてから乾燥したものはセリ科特有の芳香があり、煎じて風邪クスリとして用いられます。また「防風風呂」の浴剤として使われ、よい香りで湯冷めしにくいといわれています。

ところで、この浜防風(ハマボウフウ)は中国でいうと「北沙參」という生薬に相当します。慢性の気管支炎などに使われます。

江戸時代に中国から伝わった「防風」は以上の「浜防風」とは異なります。やはりセリ科でよく似ており、太い根を乾燥して用いますが、こちらは中国北部、モンゴルなどに分布していて日本には自生していません。中国から伝わった防風の苗を保存栽培したのが、今でも見学できる奈良県大宇陀の「森野旧薬園」を開いた森野藤助。それで「藤助防風(トウスケボウフウ)」と呼ばれました。

日本では入手しやすい浜防風でこの防風の代用をしていましたが、現在「防風」といえば、すべて中国から輸入されるこの「藤助防風」のことで「真防風」とも呼ばます。発熱、炎症、痛みなどには、漢方的に「風」あるいは「風邪(ふうじゃ)」が原因とされる病症が多い。これらの「風」をすべて「防ぐ」特効薬だから「防風」。

感冒のときの頭痛に用いる「川キュウ茶調散」や汗が出やすい虚弱な体質に用いる「玉屏風散」などに配合され、皮膚の炎症などに多用される「消風散」「清上防風湯」「防風通聖散」などは、その名前からいっても「防風」が主役だとわかります。