張瓏英先生の推奨した独活寄生湯
独活といえば、先日亡くなられた張瓏英先生の推奨した独活寄生湯を思い出します。先生は日本に中医学をもたらした大恩人のお一人でした。
日本で独活といえば、ウコギ科のウドのこと。畑の近くの竹やぶの子暗いところにウドを見つけたことがあります。一般には静岡では暖かすぎ、涼しい長野や群馬に自生します。一夏でぐんぐん伸びて見上げる程にもなりますが、しょせん、木ではなく一年生の草ですから、茎は太くても柔らかで冬になれば枯れてしまう。
なりはでけえが柱とはいえない「ウドの大木」というわけです。「ウドの大木、杖にもならぬ」とも。食品としては、江戸時代から、直射日光を遮って軟化栽培していたようで、現在スーパーに並ぶ白いウドはみなこの栽培品です。アクをとって生のまま、または湯通ししてつくる味噌あえ(ヌタ)は、初夏の私の大好物です。
江戸時代の外科医の華岡青州のつくった十味敗毒湯という皮膚のできものをきれいにする処方に独活が入っていますが、これは日本産のウドのことでしょう。薬用部分は根茎です。
中国で独活というとセリ科のししウドのこと。先ほどの和独活というのにたいしてこちらは唐独活。ウコギ科とセリ科は近縁ですから姿形はそっくりです。いのししが食べるから?ししウド。すっくと独り立って風に揺れないから独活というと古書にあります。又、この草は、風には揺れないで自ら動くというので独揺草というともあります。
根茎を乾燥して処方に入れますが、薬効は青州の十味敗毒湯のように、体表の熱や毒をとる働きがひとつ。もうひとつ、冒頭に述べた独活寄生湯の場合のように、身体の中の風湿を除き、経路を通す作用があります。健康な身体では、気血が順調に経路を巡っているのですが、風湿の邪がそこにとりついて、気血の流れを疎滞すると、腫れたり痛んだりするのだという考え方です。
具体的には関節の腫れ痛みによく用い、張瓏英先生は関節リウマチに用いると同時に他の膠原病にもこの処方を応用しました。
近縁の植物に羌活(キョウカツ)と呼ばれる生薬があり、薬効は独活とほぼ同じで、よく同時に処方されますが、羌活の方はより芳香性がつよい、(気の働きがつよい)ということで、上半身の痛みや頭痛のくすりによく配合されます。