熱で水分の枯渇した粘痰や、乾燥した便秘にも
お正月の「中華おせち」に入っているお馴染みクラゲの酢の物。
日本で食用にしているクラゲはビゼンクラゲ・エチゼンクラゲなど数種で、エチゼンクラゲがもっとも大きく傘の直径一メートル以上、重量150kgにも達します。プランクトンとは、浮遊生物という意味で、数ミクロンの微少なもの、桜エビのような動物、クロレラのような植物がありますが、この巨大なクラゲもプランクトンに分類されているのは面白い。
毎年のように漁業に大被害をもたらし、食用にならんのかなーと思った方も多い筈。エチゼンクラゲは中国長江河口付近、対馬水道、朝鮮半島南西岸などで発生すると考えられ、数年おきに大発生し日本沿岸、特に越前海岸に漂着して魚網などを破って漁業に被害を与える。
生のままでは98パーセントが水分だから、食用には塩やミョウバンなどで水分を抜き塩蔵製品にしますが、全工程に20~40日間も要するので結局中国からの輸入に頼り、あれだけ獲れても処分に困るだけというわけ。
また小型のミズクラゲは火力発電所などの冷却用取水路に大量に入って、発電を止めたりし、これも時々新聞紙上を賑わしています。
日本では古くから食用され、公家社会の宴席には欠かせぬ食品でした。奈良時代以降、天皇の食膳に供するためのクラゲが備前の国から貢進されており、これがビゼンクラゲの名の由来。
理法の記述が見られるのは室町後期からで、ショウガ酢、クルミ酢、ショウガ酢と豆腐を使った白和えなどにして食べていました。江戸初期の『料理物語』には、酢の物・和え物・吸物にも用いるとあります。中国料理ではゴマ油を加えた酢のものが前菜としてお馴染み。漢方では、清熱、化痰、止咳の作用があり、熱で水分の枯渇した粘痰や、乾燥した便秘にも用いられます。