やせ型、胃潰瘍体質の下痢気味の方にうってつけ
古書に「糯米、粳米、栗米、蜀栗米、黄精、いずれからでもつくれるが、糯米でつくったものだけが薬になり、他は食料になるだけだ」とあります。どんなデンプンからでも飴はできるが、もち米から作った飴しか薬にはならないというわけです。
同じ書には「刑曹進という武将の目に矢が当たり、抜いたら矢尻が残ってしまって鉗子でとろうとしても抜けない。死を待つのみかと嘆いていたところ、夢に古僧があらわれ、米汁を注ぐとよいという。後日、夢の古僧とそっくりの托鉢僧と出会ったので尋ねると、その米汁とは水飴のことだという。そこで膠飴を傷口にぬりつけるとムズムズと痒くなり矢尻が出てき、傷もほどなくなおった」という話を紹介しています。
瘡傷の治癒、なおってゆく時、ムズムズするのは皆さん経験しているでしょう。肉の上がりがわるいなんでいう場合、このように患部に水飴をすりつけておくのは現代でも立派に通用するでしょう。
さて、これはどうやって作るかというと、モチ米をせいろで蒸します。お餅つきのときと同じ「おこあ」を作るのです。蒸し上がったら35度(C)くらいまで、体温程度にまで冷まし、麦芽とまぜます。(麦芽とは麦を発芽させ、もやし状になったもの。
漢方と畑の師匠であるT先生が大麦を無農薬で栽培し収穫した麦を発芽させ、もやしにしたものを分けていただきました。)それをさらにぬるいお湯でうすめ、冷めきらないように浴槽に入れて一晩。翌日、どろどろの茶色の濁り水(うす甘い液体)を、濾します。これがなかなか大変な作業で、ちょっのと大型遠心分離器が欲しい。濾した液を好みのかたさになるまで煮つめればよいのです。黄褐色のやや赤みを帯びた歯にくっつく、ほのかに甘い懐かしい香りのホンモノの水飴、麦芽糖のできあがりです。
それ自身が母乳のかわりになるような総合栄養食品であると同時に消化酵素をたくさん含んでいる素晴らしい食品(薬)です。
ですから当然薬効としては胃腸障害、腹痛、時に冷え腹によい。やせ型、胃カイヨウ体質の下痢しやすい方にはうってつけ。その他止咳効果もあります。処方としては建中湯類(中=腹部=を建てなおす薬の仲間)に入っており、他の生薬を煎じてできた湯液に最後にこの飴を溶かして服用します。あったかーい、あまーい感じが大切です。