香りが良く、器にも利用
ホオノキ(朴の木)はモクレン科モクレン属の落葉高木。山歩きをしていると、くっきりと高さ20メートル以上にもそびえて、大きな葉、初夏の大きな花でよく目立ちます。万葉の時代から厚朴(ほおかしわ)として歌にも詠まれ、大きな葉に御馳走を盛って神に供えたり、朴葉鮨、朴葉飯、朴葉味噌など、香りのよい器として用いられてきました。今では旅館の朴葉味噌焼きでお馴染み。
都心でも庭木のモクレンのそばを通るとき、その香りと美しい花に思わず顔を上げてしまいますが、モクレン属は香りがよく、同属のコブシのツボミは重要な漢方薬。ホオノキの花は大型の純白の花弁と中心の雄しべの花序の鮮紅色が印象的で、なにしろ直径20cmくらいもある大型の花だからまことに見事、同属のタイサンボクの花とそっくりです。
芳香性の生薬で、胃腸の蠕動を活発に
花のあと、雌しべの集まりの花心がこれもかなり大きい果実になります。ちょうど小型のパイナップルのようです。表面には多数の袋果が付着していて、秋に熟してくると赤紫色になり中から2個ずつの種子が出てきます。この種は白い細い糸状の導管で垂れ下がり、風で遠くに運ばれやすくなっています。
アニマルファームでは10年くらい前にホオノキの苗木を三本畑のへりに植えました。1メートル以下の高さでしたが、成長が早く今では5~6メートルくらい。大きな葉をゆらゆらさせて三本並んで小屋の風よけになってます。そして嬉しいことに上記の種から実生のホオノキがちょうど並んで四本目の位置に生えはじめ、もう2メートルくらいの高さになって大きな葉をつけています。
ホオノキの利用は葉の他には何といっても材。今はあまり使われないが日本料理の板前さんが履いている高歯の下駄を朴歯の下駄というように、下駄の材料。彫ったり細工しやすいわりに狂いが少ないので刀剣の鞘に。家具、型版板、版木、ピアノの鍵盤など。ホオノキで作った木炭は緻密できめが細かいので、彫金の金銀の研磨用に使われます。
漢方薬としては、幹や枝(ときには根も)の皮をはがして使います。夏に皮をはぎとり、乾燥して細かく砕いたものが厚朴(コウボク)という生薬です。芳香性の生薬で、胃腸の蠕動を活発にしたり、気管の働きを整えます。