131.よもぎ—婦人用の妙薬。体を暖めて下腹部の痛みや出血過多などをなおす—

精油成分多く「気つけ薬」にも

「灸にする餅にする蓬摘みにけり」(子規)というように、早春の柔らかい葉はよもぎ餅(草餅)のします。葉をよく乾燥してからもんで葉の裏の白い繊毛を集めたのが灸の材料のモグサ。
各地に野生しているお馴染みのキク科の雑草(!)です。根茎がしっかりして横走して増えるので、畑仕事から考えるとやっかいな雑草なのです。

西洋でも古くから知られ利用されていた雑草で、学名のArtemisiaは、ギリシャの女神Aritemisに由来するといわれます。「女神」というのがミソで婦人科の大切な薬です。靴の中に敷いておくと一日中歩いても疲れ知らず、という利用法も。時代は下がって、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」の中で、魔法ときのくすりに「よもぎ」が登場しますが、これは西洋ではMidsummerDayによもぎを収穫する習慣があったから。

中央アジアでは燃料として使うといいます。お灸のモグサもよく燃えるので、よもぎの「善燃草」の字をあてたりします。精油成分が多いということです。この成分が芳香を放つので、先のシェイクスピアの「気つけぐすり」にもなるし、端午の節句には菖蒲とともに浴剤にしたり、その由来譚が昔話の「蛇聟入り」や「食わず女房」で語られているように、軒先にぶら下げて厄除けに使われたのです。

体を暖める作用

漢方薬としては、艾葉(がいよう)といい婦人科ではもっとも多く使われる薬のひとつです。体を暖めて下腹部の痛みや出血過多などをなおすので、住環境の悪かった昔の女性も、そして冷房のききすぎる現代の女性にも。外用薬としては、畑仕事に切り傷や虫刺されは避けられないのですから、春~夏にかけては傷がつくと大急ぎでよもぎの葉をむしってそのままこすりつけます。青汁が出て少ししみるようであれば一丁上がり。翌日には、アブ刺されなど相当つよい炎症もきれいにあとを残しません。

一口に虫の酸を植物のアルカリで中和するといいますが、やはりよもぎはよく効き、他の雑草の葉にはかえがたいものがあります。
食品としては草餅や草だんごの他に、よもぎ茶、よもぎ煎茶などもあるようです。