多くの弁が合わさっているから百合
百合と書けば、誰でもユリと読み、あの美しさと清楚さをもちあわせた花や、茶碗蒸しにいれるユリ根を思い出します。古く日本では由利、由里、或いは由流などと表記されていたようで、「古事記」には神武天皇が小川のほとりに小さなユリ、小由里(サユリ)をみつけたという記述があります。
百合と書けば、誰でもユリと読み、あの美しさと清楚さをもちあわせた花や、茶碗蒸しにいれるユリ根を思い出します。古く日本では由利、由里、或いは由流などと表記されていたようで、「古事記」には神武天皇が小川のほとりに小さなユリ、小由里(サユリ)をみつけたという記述があります。
ユリには多くの種類がありますが、葉が笹のようにみえるササユリについて、牧野富太郎博士のエッセイには「土佐高岡郡佐川町付近の山地にササユリの一変種がある。花の咲いている時分に山村の人が十本ぐらいの根を一束にして市中に売りにきていた。その根を薬用食にせんがためで、これを食すと痰がとれるといっている。これは私が子供の時分のことであった・・・」とあります。
普通郊外の崖などに今でもよく見かける大型の白色のユリはヤマユリと呼ばれ、その根は食品としておいしい。料理ユリといわれたり、地方名をつけて吉野ユリとか箱根ユリとか呼ばれます。勿論、市場に出ているユリ根は栽培ものですが。
カラカラに乾いた気道を潤すことによって咳を止める効力
「百合」とは、中国名。日本でもかなり古くからそれにならって由里→百合と表記がかわりました。漢方の世界では、ユリと呼ばずビャクゴウ。何故「百合」なのか中国の古医書でも諸説あり、例えば「百合は多くの弁が合わさって出来ているから百合。又は百合病を治す薬だから百合」とあります。多くの弁とは花のことをいっているのではなく、ユリ根のあの鱗片の重なりのことでしょう。
百合病とは、古書には「百合病は百脈一宗ことごとくその病を致すなり」とあり、未だにはっきりした解釈のつかない病名として有名です。百合しか効かない病気だから百合病というのだ、といわれても、なにしろ具体的症状の記載が古典にあまりないので未だにすっきりしないのです。
薬としての百合は、食用よりはやや苦いといっても基本的には同じものを栽培して漢方処方に入れます。潤肺止咳といって、カラカラに乾いた気道を潤すことによって咳を止める効力があります。ユリ根を食べればわかるように消化がよく滋養にとんでいますから、咳で体力が落ちているときには絶好です。
同じ咳止めで、同じユリ科のアミガサユリの根茎も同じような生薬ですが、これは漢方名貝母(バイモ)といって別に扱います。