4.小豆、(あずき、赤小豆)—「脚気」(脚のむくみ)に用いらる—

昔は「赤いダイヤ」

大豆に対して小粒だから小豆。赤いから赤小豆、ともに日常的には「あずき」と読みますが、漢方薬として呼ぶときは、セキショーズといいます。

学生時代の思い出。アリコ・ルージュという喫茶店があってバイトをしていたのですが、フランス語で赤い豆という意味。あずきのことかー。その頃、学生結婚で女の赤ちゃんのできた友人に名前の相談を受け、「あづき」はどうだとこちらは冗談半分にいったのが採用されて・・・。そのあづきちゃんも今では立派なレディーです。

さて小豆は、中国・日本など東アジア原産で古くから栽培されています。近縁の緑豆(リョクトウ)は、中国でも、"春雨"や"もやし"に使われますが、小豆は日本人が特に好むようで、他国では食べれず、栽培されていてももっぱら日本への輸出用です。日本での栽培は北海道中心で、相場商品。天候次第で価格の変動がはげしいので「赤いダイヤ」などと呼ばれました。

食品としては無論、お赤飯。お赤飯には、小豆よりやや大粒の「ささげ」もよく用いられます。それになんと言ってもお汁粉にあんこ、羊カン。子供の頃から甘党だった私。砂糖が充分に手に入らない時代でしたから、甘いアンコに対する憧れはつよかった。臨海学校で、さんざん海で遊んだあとの塩辛い口に、お汁粉の至上の味。今でも生クリーム系の甘さよりもアンコに手が出ます。

脚のむくみに

クスリとしての使い方は、民間的には、砂糖などを使わずに、小豆を水で煮るだけ。母乳の出をよくしたり、往年の「脚気」(脚のむくみ)に用いられました。
あづきをセキショーズとして漢方薬に用いることを知ったのは、漢方を始めて数年、赤小豆と鯉を煮たものを、腹水の貯まった患者さんに食べさせてむくみをとった、という論文を読んだとき。赤小豆鯉魚湯というそのものの名前のついた方剤です。薬膳に近い方剤ですが、塩も砂糖もなしですからおいしいことはない。

珍しい方剤では、胃に入った毒を吐かしてとり除く、吐剤といわれる柿蔕散があります。これは柿蔕(カキの実のヘタ)と赤小豆を粉末にしてまぜたものです。
京都では伝統的に十日にいちどはお赤飯を食べていました。十日間のたまった水分(水毒)をすっきり利尿する為です。上記のように砂糖を入れないで煮たアズキの作用を、ごはんと胡麻塩で生かした生活の知恵です。