117.ふき(蕗・蜂斗菜・款冬・款冬花)—鎮咳去痰に—

早春の香り

北海道を除く日本全土、朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草。比較的温暖な函南の薬草園の土手には、例年1月下旬には「蕗の薹(フキノトウ)」が顔を出します。今年も楽しみにしていたのですが、見当たらない。地下茎で一定の範囲を占拠している筈ですが、勢いの旺盛な茅=カヤに駆逐されてしまったかも。夏場の草刈りをさぼると、ちゃんとこのように結果がでます。四~五月になって、あの大きな葉をつんつんと出してくれば、ああやはり此処にあったのだ、と判りますが。

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キク科フキは雌雄異株の多年草で、早春に地下茎から大型の苞をつけた花茎を伸ばし、こんもりと地上に顏を出す。この花茎が「蕗の薹」です。特有のほろ苦さは、天ぷらで、刻んで蕗味噌にして、やはり一年に一回は欲しい早春の香り。

フキノトウの食べ頃はあっという間に過ぎてしまい、ぐんぐんと伸びてその尖端に頭状花をつけます。雌花は白色、雄花は黄色。実を結ぶのは雌花で、ちょうどタンポポのように絹糸のような毛がついて風で四散する。その後この花茎は枯れてしまうので、次に目につくのは晩春の大きな葉。この大型の円形ハート型の葉を支える葉柄は太く長い。これが煮物・おひたしなどにする食用の蕗です。
包丁で簡単に切り取れるので収穫、というほどのものではありません。皮むきも鼻歌まじりの楽しい作業です。灰汁などでアクをとり、薄味で煮れば立派な一品。

さて、蕗は古くから馴染みの植物で、漢字で表記する以前には「ヤマフフキ」とか「オオバ」と言っていたようですが、10世紀の古書には「款冬」や「蕗」という漢字が当てられています。後述するように「款冬」は現在では同じキク科の「蕗タンポポ」のことを指し、別ものです。日本の蕗は中国では「蜂斗菜」。日本では食用の方が一般的ですが、蕗の薹を煎じれば解熱、去痰などの風邪クスリになります。中国ではこの根を煎じて喉のうがいクスリにしたり、すり潰して皮膚の炎症に塗布します。

款冬(款冬花)は上述のように、蕗蒲公英(フキタンポポ)のこと。葉が蕗に、花がタンポポに似ているからこの名があるが、中国から導入したもので自生種ではありません。蕗の薹のように地上に顔を出すずっと前、晩秋から初冬にかけてまだ地中にある花蕾を掘り出して用います。鎮咳去痰の射干麻黄湯などに配合されます。

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