34.かんじゅう(貫衆・ゼンマイ) 41.くせき(狗脊・ワラビ)—古来より、薬草として使われました。—

根から取るわらび粉でつくったわらび餅

植物の進化の歴史をたどると、海草・菌類~シダ植物~裸子植物~被子植物の四つの時代となります。シダ植物が登場したのは、今から5億年前のカンブリア紀末。その後、2億年の時を経て裸子植物へと進化しました。

植物を大きく二分類すると、花が咲いて種で殖える種子植物(杉や松のような裸子植物と、それが進化した被子植物)と、花が咲かず胞子や分裂で殖える胞子植物に分けられます。シダ類は胞子植物の仲間で、他にはキノコのような菌類、ケイソウなどの藻類、コケ類があります。このうち根・茎・葉の区別があるのをシダ類、区別がないのをコケ類と総称します。

「胞子は発芽すると前葉体と呼ばれる薄膜状の植物体となり、その裏面に造精器と造卵器が作られる。造精器内に作られた精子は、雨水など自由な水がある状態で泳ぎだし、造卵器の中の卵まで泳ぎ着くと、そこで受精が行われる。受精卵はその場で発芽し、前葉体から栄養をもらって成長し、植物体が姿を見せる」そうですよ。知っていました?

ワラビ、ゼンマイといえば、初夏の山菜で若葉を食用にしますが、シダ類の根茎には多量のデンプンが含まれ、縄文時代には既に重要な食料でした。その名残りがワラビ餅です。このように食用にするのは日本だけで、世界的にみればシダ植物の根は古来、薬草として使われてきました。
例えば古代ギリシャの『ディオスコリデスの薬物誌』には数種類のシダ植物が登場していますが、例えば条虫を排出する駆虫剤として利用されたプテリスはセイヨウオシダ(西洋・雄羊歯)のことだと云われています。

中国漢代に成立した『神農本草経』に記載されている「貫衆」と「狗脊」もシダ植物で、同じ薬効をもつ何種類かのシダのことだと云われていますが、だいたい貫衆はゼンマイ科のゼンマイの根茎、狗脊はタカワラビ科のタカワラビの根茎といってよいでしょう。狗脊とは、犬の背骨という意味で、その根茎の形から連想されてもののようです。ともに駆虫作用や筋骨を強めるはたらきがあります。

日本では食用以外にも、ゼンマイの綿毛を織物の原料の一つとしたり、デンプンを採取した後に残る根茎の繊維を撚ってロープにしたり、家や蔵の土壁に塗りこめる竹格子をとめるのにワラビ縄を利用したりと様々に使われました。