食すれば剛介
正式に読めばカイシ又はガイシですがカラシのことで、最近では辛子と書いた方が通りがよいようです。アブラナ科のカラシナ、「芥子菜」のことで、大根の葉、高菜、ザー菜など皆同じ種類です。葉の縁がギザギザ鋸状になっていて食べるには手強い感じがしますが、漬け物にしたり、ゆでればピリッと辛味のきいたおいしい菜っ葉です。古くから中央アジアで食用とされ、中国、日本へと伝わったようです。
漢方の古書には、「その気味辛烈にして、菜中の介然たるもに、食すれば剛介の象がある。」と書かれています。ピリッとした味とその勢いがよくピンとと伸びた葉の姿からでしょうか、剛気なもの、食べれば身体が強くシャキッとするといった意味です。その「介」の字から芥子と書かれたということです。
芥子は無論その種子のこと、種類により種の色が異なり、白カラシや黒カラシは洋カラシいわゆるマスタードで、日本のカラシは、黒カラシと他のアブラ菜が交配した雑種といわれており、種子は御存知のように黄褐色。粉末にしたものを食前に水でよく練ると、シニグリンという成分が加水分解されてあの独特の強い辛みと、鼻にツンとくる芳香性の刺激が生じます。子供の頃、納豆が大好きで大人の真似をして辛子を入れすぎ、涙ぐんだ経験は皆さんにもあるでしょう。
シューマイには欠かせぬ辛子醤油。豚の角煮や冷し中華といった甘めのタレにはカラシは絶対必要。酢味噌和えにカラシを隠し味に加えたりもします。おいしいですね。醤油の防腐剤としても使われています。
風邪の湿布に効果あり
薬としては、同じ仲間の大根の種子(漢方ではライフクシという)と共に煎じて気管支炎に用います。又、水で練ったものを「辛子泥」といい、冷えると痛む関節や、咳のなかなかひかない長びいた風邪の時には胸や背中に湿布します。
面倒臭いし、やぼったいし、皮ふにも強い刺激があって火傷状になりやすいですから最近では敬遠されがちですが、皮ふに直接塗らずにガーゼを何枚か重ねた上から湿布すれば、とても効きます。夜間コホンコホンを繰り返しているお子さんやお年寄りには試して下さい。小麦粉と合わせて薄めて使うとよいでしょう。