14.岩ぢしゃ(山ぢしゃ・イワタバコ・岩煙草)—じっくり煎じて胃腸薬に—

有名なのはセントポーリア

暖かい地方の山地の湿った岩場に生えるイワタバコ科の夏緑多年草。
葉が軟らかく食用になるので、サラダ菜・レタスの和名である「ちしゃ」をつけて岩ぢしゃ、山ぢしゃという。また葉の形や花の感じがタバコに似ているのでイワタバコ。この方が通りがよい。

イワタバコ科は世界中の暖地に分布しているが、特に有名なのは鑑賞用としてファンの多いセントポーリア。葉は貯水・多肉の傾向があってややぼったりした印象があり、近縁のゴマノハグサ科の漢方薬「地黄」の葉とそっくりです。繁殖力が弱く繊細なのでセントポーリアに凝っている方は旅行できない!!

さて、イワタバコ科イワタバコ属の岩ぢしゃは、数枚の葉が褐色の毛を有する根茎から出て、岩壁に垂れ下がっています。形は長楕円形で長さは10~30センチと大きく、辺縁には不整のまばらな鋸歯があります。夏に10cm前後の花茎を垂らし、数個から20個近い径2cmほどの美しい淡紫色の花を散状につけるので、鑑賞用の山草としても人気があります。果実は細長く、多数の微細な種子をいれる堕果(さくか)。

夏季の葉は綠ですが、冬季はチリメン状に葉を固く丸めて越冬する多年草なので、夏緑多年草という。岩ぢしゃはイワタバコ科の中では耐寒性があり、暖温帯、日本(東北以南)と台湾に分布しています。私は千葉南房総の山中でこの岩ぢしゃを採取し、我が家の玄関先の日陰に植えたことがありますが残念ながら着生しなかった。やはり繁殖力は弱いようです。

若葉は古くから山菜として利用されてきました。ほろ苦いが軟らかく粘り気があって、そのまま生で酢みそ和え、また天ぷら、茹でてお浸しなど。山草として花を観賞したり,ロックガーデンに栽植されます。葉からは苦味配糖体のコナンドロシドなどが単離されています。
苦味健胃剤として民間では、夏の開花期に成熟した葉をとり乾燥してじっくり煎じて胃腸薬として服用します。中国では葉の汁を傷口に塗って止血に用いているようです。